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2025.10.06

熊本4Hクラブが戸馳島へ!農家ハンター流・鳥獣害対策の現場を学ぶ

農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。

熊本県青年農業者クラブ(通称4Hクラブ)の皆さんが、農家ハンターの拠点・戸馳島を訪れました。若手就農者や行政関係者など、次世代の農業を担う方々が集まり、鳥獣害対策の「い・ろ・は」を現場で学ばれました。

この記事では、学びの様子と農家ハンターが伝えた“実践型の鳥獣害対策”のポイントをレポートします。

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【レポートのポイント】
▶︎ 若手農家と行政が現場で学んだ「リアルな鳥獣害対策」
▶︎ イノシシ対策に欠かせない電気柵と箱罠の正しい運用
▶︎ 残渣処理や耕作放棄地の管理など、日常の工夫が被害防止につながる
▶︎ 命と向き合う現場での“止め刺し”や減溶化施設の実情
▶︎ 地域で維持・管理する体制づくりの大切さ

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農業と鳥獣害対策は切り離せない

参加者は若手農家の方々や、農水課など農業関連の行政担当者。
近年、野生動物による農作物被害は各地で増加しています。農家ハンターでは「農業をする以上、鳥獣害対策はセットで考えること」と伝えています。それほど、鳥獣害は農業と切り離せない課題になっているのです。

実際、三角町ではかつて捕獲数ゼロだったイノシシが、わずか4年で1000頭獲れるようになりました。「うちは関係ない」と思っていた地域でも、予防のための知識が欠かせません。


無意識の“餌付け”を防ぐ|残渣処理と耕作放棄地の管理

残渣の処理

収穫後の残渣を防護柵の外に捨てると、イノシシやシカを呼び寄せてしまう原因になります。味を覚えた動物は、どうにかして畑に侵入しようとします。さらに食べ物が豊富になると、動物の栄養状態が良くなり、飢えずに越冬して数が増えることも。無意識の餌付けをしないことが第一歩です。

耕作放棄地の管理

イノシシは体を隠せる場所を好みます。草が茂った放棄地は、格好の潜み場です。地域で定期的な草刈りを計画し「隠れ場」をなくし、とどまりにくい環境を整えましょう。

 


イノシシは学ぶ動物|電気柵の正しい使い方

イノシシやシカは非常に学習能力が高い動物です。
光・音・匂いなどを利用した忌避グッズもありますが、次第に「怖くない」と学習してしまいます。

一方、その学習能力を逆手に取った対策が電気柵です。「痛い!怖い!」と体験することで避けるようになります。
ただし、昼間に電気を切っていたり、電圧が弱い状態が続くと「怖くない」と覚えてしまいます。

→電気柵は“常に適正な電圧で通電”させること、そして“設置後の管理”が何より大切です。


ソラシドエコファームで学ぶ電気柵体験

戸馳島にある「ソラシドエコファーム」では、ソラシドエアさんと協働して電気柵を学ぶ体験研修が行われました。

この日測定したところ、なんと8000ボルト!
葉っぱで電気を感じたり、手で触れてみる参加者もいて、現場はヒヤヒヤと笑いに包まれました(※真似はしないでください😅)。

畑と道路の段差がある箇所では、通常より1段多い3段電線を設置。

一方で、芋の葉が電線に触れる部分もあり、「電気柵と作物は50cm以上離す」という基本ルールを再確認しました。(NG例もしっかりここでお伝えします♡)


箱罠の運用を学ぶ|Q&Aで現場の疑問を解決

箱罠の前では質問が飛び交いました。

  • Q:エサはどのくらいの頻度で入れる?
    → 食べ具合を見て判断します。週1回程度は見に来ます。

  • Q:両開きと片開き、どちらが良い?
    → 両開きだと落ちるのにタイムダグがあるため片開きを採用しています。

  • Q:罠カメラの電池は?
    → スマホで確認。頻度は使用状況によります。

  • Q:この箱罠で年にどのくらい獲れる?
    → 2回ほど。

  • Q:エサを食い逃げされることは?
    → ある。罠の外から食べたりトリガーの周りだけ食べることもあります。

現場での工夫が細部に光る内容でした。

かたつむりを乗っける古石さんチラリ

箱罠のそば・田んぼの横にイノシシさんの足跡発見!


地域全体で取り組む鳥獣害対策

柵を設置しただけでは終わりではありません。
重要なのは「どう維持・管理するか」を地域で話し合うこと。
地域ぐるみで取り組むことで、対策が“絆を深める活動”にもなります。

 


命と向き合う現場|止め刺しと減溶化施設

農家ハンターでは、なるべく動物に恐怖や痛みを与えないよう「電気止め刺し機」を使うことが多いです。
ただし、止め刺しの現場は精神的な負担が大きく、「空気銃による止め刺し」が最もストレスが少ない方法とされています(ただし免許・コストの問題あり)。

また、イノシシを粉末化する減溶化施設は、鳥獣害に悩む地域にとっての救世主。
処理コストはかかりますが、埋設するより労力も軽減できます。灯油45リットルと電力を使うことから、まとめて効率的に稼働させています。

「命を無駄にしない」という理念は、肉としてではなく別の方法で形にしています。

 

ジビエファームにも来てもらいました。

 

 

 


参加者の声とまとめ

4Hクラブのこの会代表の古石さんは、

「鳥獣害対策は身近にあると思っていたけれど、知らないことがたくさんあり驚きました」

と感想を述べられていました。

三角・戸馳島は、農家ハンターの鳥獣害対策ノウハウが詰まったモデル地区のようになっています。

暑い中、大変お疲れさまでした!

 

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2025.06.13

農水省職員がプライベート研修に!ジビエ・害獣対策のリアル

こんにちは!農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです。
2025年6月、農林水産省の職員の方々が、プライベートで研修にお越しくださいました。今回は、その現場でのやりとりや学びをレポートします!

この日お越しくださったのは、農林水産省よりお3方。

  • 九州農政局  谷川 智雄さん

  • 九州農政局  玉城 寛人さん

  • 本省鳥獣対策室 佐藤 駿悟さん(東京から!)

仕組みを作る側、日本の鳥獣対策の“ど真ん中”にいる皆さんです!

 


【レポートのポイント】
▶︎三角町の鳥獣被害対策
▶︎ジビエファーム・解体施設運営のリアル
▶︎狩猟文化の有無
▶︎箱罠の選び方と注意点
▶︎柵設置のコツ
▶︎イノシシパウダー化マシーン
▶︎まとめ


 

2024年度は、全国的に捕獲頭数が多かったそうです。農家ハンターの本拠地・宇城市三角町の2024年度のイノシシさん捕獲頭数は1016頭と過去イチです。

三角町の鳥獣被害対策

狩猟文化の有無

三角ではもともと捕獲文化がなく捕獲技術を持った人が地域にいませんでした。
農家ハンターに当初から多大なご協力をしてくださっている大師匠・山本さんが三角じゅうを回っていて、それを引き継ぐように稲葉たっちゃんと井上くんが取り組んできました。

それから時間をかけ、住民自身が捕獲できるように技術を共有してきました。

いろんな地域で話を聞くと、もともと狩猟文化があるところは動物がいる環境も食すのも当たり前でした。対策に従事する人もいて、そこまで困っていない印象があるそうです。

 

狙いは動物たちの「絶滅」ではなく、「山から人里への出没数を減らす」こと。
“濃くなった部分を薄める”という感覚が大切です。

 

解体施設運営のリアル

 

 

捕獲頭数が左右する運営の難しさ

ジビエの解体処理施設であるジビエファームは、農家ハンターから生まれた株式会社イノPが運営しています。この解体施設をつくる費用を確保するために会社を立ち上げて今に至ります。実際にやってみて、直面した課題がいくつかあります。

  • 季節によって変動する捕獲数

  • 売れる肉と売れない肉の差

  • 味と品質の維持

  • 食肉にならない部位(残渣)の処理先の確保

残渣の処理は、どこが引き受けてくれるかは自治体によってまちまち……
家畜ではないのと民間施設の解体処理施設であることから処理先の確保が一筋縄ではいかず非常に大変だったようです。

 

捕獲が増えると、「命を無駄にしたくない」という想いから、解体施設の設置やジビエ利活用をする動きが出てきます。
命を無駄にしたくないという思いの表れだと思います。

しかしこれまでの経験から、有効活用・利活用したい気持ちは重々わかるものの解体施設をつくるのは慎重に、と稲葉たっちゃんは普段から伝えています。

 

ジビエ活用までのおすすめフロー

ジビエ活用までのおすすめフローはこちらです。

減溶化設備を整える(イノシシさんを5時間でパウダー状にします。堆肥としての活用を検討中)

どのくらい、どんな個体が捕獲されるかを知る

解体施設をつくっても採算取れるか?
肉の取引先はあるか?
残渣はどこが引き取ってくれるか?
人的経済的に運営できるか? を検討

見通しがたてば解体施設をつくる

 

現場で見た!箱罠の選び方と注意点 

箱罠には多様な種類がありますが、重要なのは「どんな個体を捕獲したいか」によって適切なタイプを選ぶこと。

  • 感度が高すぎるとウリ坊だけがかかって親を逃してしまう

  • 取り逃がした親は二度と罠にかからないことも

「獲りたい個体に合わせた罠選び」が捕獲率を高めます。

止め刺しと電気ショッカーの選択肢

現場での精神的負担と対策

止め刺しの道具、電気ショッカーも実際に持っていただきました。

 

捕獲にかかる最大のハードルが止め刺し。
狩猟とは違い、有害鳥獣対策のために捕獲する人は「獲らなくていいなら獲りたくない殺したくない」という思いを持つことが多いです。精神的ストレスが大きいため、止め刺しの方法は負担が小さいことが重要です。槍をつかうところも多いですが簡単ではありません。そして心身ともにすり減ってしまうという経験をたっちゃんも井上くんもしてきています。

空気銃は人間にも動物にもストレスがありません。が、銃を持つのは簡単ではないので、やはり電気ショッカーが扱いやすいです。

手作りする人もいますが、それだと電気が流れていることが分からなかったりしてヒヤリハットが多いため、安全面に配慮されたものを購入することをおすすめしています。

 

柵設置のコツ:メッシュ柵と金網柵

メッシュ柵の設置方法

メッシュ柵は害獣対策をしている地域ではどこでも見かけます。ブログでも何度か取り上げていますが、その向きは裏表が逆になっていることも多く、どうやら納品の仕方に原因があるようです!
納品時、表・裏・表・裏とたがいちがいに重ねてあるそうです。重ねてある通りに設置すれば、たがいちがいの柵になってしまうというわけです。

「納品の仕方を変えてもらったらいいのでは……」とわたしは思いましたが、コンパクトにするためには致し方ありません。

 

 

両端を隣の柵と1マス分被せるのも重要です。
害獣たちは畑に入れる抜け道をぐるぐると回りながら探し、「ここ弱そう、いけるかも」な場所があれば掘ってすり抜けようとがんばります。その隙を与えないようにするために、両端を重ねて守りを固めます。重ねることを計算に入れて、必要数を調達する必要があります。

 

金網柵

ゴリ押しなのが金網柵です。地面の状態に合わせて張れるため、隙間ができません。L字で張るので、動物が掘って中に入ることができないためです。人手や手間はかかるしコストもかかります。でもその分効果があります。しっかり張れば動物の侵入も、食害によるストレスもありません。

全てを金網柵で張るのはコスト面で難しい場合、地面がごつごつ/凸凹した場所は金網柵にし、それ以外はメッシュ柵にするなどして場所ごとに検討してもいいでしょう。

減溶化施設「イノシシパウダー化マシーン」

総重量400kgを一度に、まるごと処理できます。

休眠預金を活用して導入した、新イノ粉マシーン。解体に向かない個体、肉にならない部分の処理の行き先としてはもちろん、この減溶化マシーンの運用をしていくことで、地域で鳥獣対策する人の後押しもできます。

止め刺しとその後の処理が2大難関の害獣被害対策。山での埋設処理が多いですが、国の研究機関が作成したガイドブックによれば、掘り起こしが起きない深さとしては、150cm以上の深さがあることが望ましいとされています。浅いと掘り起こされる可能性があるからです。
150cmを掘る……想像できますか?汗だくで体力も時間もすり減ります。わたしはたぶん、ぶっ倒れます(・∀・) 施設はその処理を担ってくれます。

無機質と混ぜて堆肥とすれば、畑への散布や販売の道も見えるかもしれません。

 

 

 

古石さんのいちじくハウス

TOBASE  Island Works代表の古石さんのいちじく農園も訪ねました。いちじく栽培についてや特定地域づくり事業についての意見交換などしました。
(特定地域づくり事業についての取り組みはこちらをご参照ください https://farmer-hunter.com/blog/5332

特定地域づくり事業によって就農者を増やしたり地域の人口減少を食い止めたいという思いがあると古石さん。

いちじくが実っている様子を見るのは初めてで、3ヶ月でこんなに大きくなるんだ!と驚きました。

 

 

柿の木の下で、ヤギを眺めながらのまとめ

宮川洋蘭の柿の木ガーデンで、クロストーク。
ヤギを眺めながら……というよりもヤギも混ざってきていました。

今回はスケジュールはある程度決めていたものの、聞きたいことに合わせて時間を調整しました。ジビエファームで2時間も話したのは初めてでした笑

政策をつくっていく皆さんです。
質問する姿勢や内容、まなざしから熱意が伝わってきました。
公も民も一緒に、ですね。今回のプライベート視察が政策に活かされていくことを願っています。

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2025.05.23

苗植えに草刈りにBBQ〜2025年春のソラシドエコファーム レポート

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年5月彼らの現場で見て感じた事をレポートいたします。

 

ソラシドエアと耕す「ソラシドエコファーム」とは?

九州の翼・ソラシドエアさんと農家ハンターが共同で運営している畑は、もともと耕作放棄地だった場所を再開墾し、「ソラシドエコファーム」として再生しました。
現在は3か所に広がり、1か所では栗の苗木、残る2か所ではさつまいもを育てています。

今回は、芋の苗植えと栗畑の草刈りの様子をご紹介します!

写真をふんだんに取り入れた現場レポート、ぜひご覧ください。

 

【エコファーム1】さつまいもの苗植えに挑戦!

ここは最初に開墾された「第一号」のエコファーム。
この日は、4月に新しくソラシドエアに入社された方も一緒に、さつまいもの苗を一つ一つ丁寧に植えていきました。

 

 

 

 

 

畑には イノシシ避けの電気柵を設置。実際に草を使って通電を確認する場面もありました。湿った草だと感電がより伝わりやすいんです。

 

 

 

万博でも披露したというオペラも聴かせていただきました。畑のオペラは格別でした✨

 

【エコファーム2】栗畑の草刈りで汗を流す!

こちらは栗の苗木を育てている畑。
草刈りは初挑戦の方も多く、服装を整えて、安全第一で作業に取りかかりました。

 

 

 

定期的なお手入れが作業効率をUP

苗木の周りには藁が敷かれ、たっちゃんの定期的な草刈りのおかげで作業はスムーズに進行。
さらに藁を追加して、苗木の根元をしっかり守ります。

追加の藁!また苗木の周りに敷きます。

休憩には定番アイス「ブラックモンブラン」!

九州ではおなじみのアイス”ブラックモンブラン”を紹介しながら、ひと休み。

まるでドラマ「ルーキーズ」みたいじゃないですか?笑

 

【エコファーム3】みすみ保育園の園児たちと苗植え体験!

恒例の収穫祭でもお馴染み、みすみ保育園の年長さん12人が元気いっぱいに参加してくれました!

 

 

 

「お姉ちゃんかわいいから好き〜」なんてほっこりな声も聞こえてきました

 

 

社長も園児さんと一緒に!

 

 

戸馳島のゴツゴツとした土も、再び耕すことで柔らかくなってきたそうです。

 

 

 

 

 

 

虫や草、時には大人から見ればゴミのようなものにも夢中になる園児たち。好奇心いっぱいです!

バイバイの時、ソラシドエアのお兄さん大人気でした笑

最後はみんなで「イノシシピース!」

「飛行機はソラシドエア!」と唱えながら、笑顔で帰っていった子どもたち。

大人だけで残りの苗を静かに植えたときの、あまりの静けさ!笑

終わりに:海辺でのBBQで締めくくり!

作業と暑さと園児たちのパワーでお腹が空いたら、海辺でBBQ!

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ戸馳島の吉本さんが持ってきてくれた車海老は、生でも焼いても絶品✨

そしてイノシシ肉は、シンプルな塩胡椒で焼くだけで大人気!

 

 

自然の中での作業はちょっと大変な分すごく楽しくて、心も体もリフレッシュできます。
子どもたちの笑顔や、わいわいした時間にたっぷり元気をもらいました。

畑づくりを一緒に進めてくれているソラシドエアさん、本当にありがとうございます!

これからも、現場で見たこと・感じたことを、写真とともにお届けしていきます。
次回のレポートもどうぞお楽しみに!

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