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2025.10.06

熊本4Hクラブが戸馳島へ!農家ハンター流・鳥獣害対策の現場を学ぶ

農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。

熊本県青年農業者クラブ(通称4Hクラブ)の皆さんが、農家ハンターの拠点・戸馳島を訪れました。若手就農者や行政関係者など、次世代の農業を担う方々が集まり、鳥獣害対策の「い・ろ・は」を現場で学ばれました。

この記事では、学びの様子と農家ハンターが伝えた“実践型の鳥獣害対策”のポイントをレポートします。

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【レポートのポイント】
▶︎ 若手農家と行政が現場で学んだ「リアルな鳥獣害対策」
▶︎ イノシシ対策に欠かせない電気柵と箱罠の正しい運用
▶︎ 残渣処理や耕作放棄地の管理など、日常の工夫が被害防止につながる
▶︎ 命と向き合う現場での“止め刺し”や減溶化施設の実情
▶︎ 地域で維持・管理する体制づくりの大切さ

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農業と鳥獣害対策は切り離せない

参加者は若手農家の方々や、農水課など農業関連の行政担当者。
近年、野生動物による農作物被害は各地で増加しています。農家ハンターでは「農業をする以上、鳥獣害対策はセットで考えること」と伝えています。それほど、鳥獣害は農業と切り離せない課題になっているのです。

実際、三角町ではかつて捕獲数ゼロだったイノシシが、わずか4年で1000頭獲れるようになりました。「うちは関係ない」と思っていた地域でも、予防のための知識が欠かせません。


無意識の“餌付け”を防ぐ|残渣処理と耕作放棄地の管理

残渣の処理

収穫後の残渣を防護柵の外に捨てると、イノシシやシカを呼び寄せてしまう原因になります。味を覚えた動物は、どうにかして畑に侵入しようとします。さらに食べ物が豊富になると、動物の栄養状態が良くなり、飢えずに越冬して数が増えることも。無意識の餌付けをしないことが第一歩です。

耕作放棄地の管理

イノシシは体を隠せる場所を好みます。草が茂った放棄地は、格好の潜み場です。地域で定期的な草刈りを計画し「隠れ場」をなくし、とどまりにくい環境を整えましょう。

 


イノシシは学ぶ動物|電気柵の正しい使い方

イノシシやシカは非常に学習能力が高い動物です。
光・音・匂いなどを利用した忌避グッズもありますが、次第に「怖くない」と学習してしまいます。

一方、その学習能力を逆手に取った対策が電気柵です。「痛い!怖い!」と体験することで避けるようになります。
ただし、昼間に電気を切っていたり、電圧が弱い状態が続くと「怖くない」と覚えてしまいます。

→電気柵は“常に適正な電圧で通電”させること、そして“設置後の管理”が何より大切です。


ソラシドエコファームで学ぶ電気柵体験

戸馳島にある「ソラシドエコファーム」では、ソラシドエアさんと協働して電気柵を学ぶ体験研修が行われました。

この日測定したところ、なんと8000ボルト!
葉っぱで電気を感じたり、手で触れてみる参加者もいて、現場はヒヤヒヤと笑いに包まれました(※真似はしないでください😅)。

畑と道路の段差がある箇所では、通常より1段多い3段電線を設置。

一方で、芋の葉が電線に触れる部分もあり、「電気柵と作物は50cm以上離す」という基本ルールを再確認しました。(NG例もしっかりここでお伝えします♡)


箱罠の運用を学ぶ|Q&Aで現場の疑問を解決

箱罠の前では質問が飛び交いました。

  • Q:エサはどのくらいの頻度で入れる?
    → 食べ具合を見て判断します。週1回程度は見に来ます。

  • Q:両開きと片開き、どちらが良い?
    → 両開きだと落ちるのにタイムダグがあるため片開きを採用しています。

  • Q:罠カメラの電池は?
    → スマホで確認。頻度は使用状況によります。

  • Q:この箱罠で年にどのくらい獲れる?
    → 2回ほど。

  • Q:エサを食い逃げされることは?
    → ある。罠の外から食べたりトリガーの周りだけ食べることもあります。

現場での工夫が細部に光る内容でした。

かたつむりを乗っける古石さんチラリ

箱罠のそば・田んぼの横にイノシシさんの足跡発見!


地域全体で取り組む鳥獣害対策

柵を設置しただけでは終わりではありません。
重要なのは「どう維持・管理するか」を地域で話し合うこと。
地域ぐるみで取り組むことで、対策が“絆を深める活動”にもなります。

 


命と向き合う現場|止め刺しと減溶化施設

農家ハンターでは、なるべく動物に恐怖や痛みを与えないよう「電気止め刺し機」を使うことが多いです。
ただし、止め刺しの現場は精神的な負担が大きく、「空気銃による止め刺し」が最もストレスが少ない方法とされています(ただし免許・コストの問題あり)。

また、イノシシを粉末化する減溶化施設は、鳥獣害に悩む地域にとっての救世主。
処理コストはかかりますが、埋設するより労力も軽減できます。灯油45リットルと電力を使うことから、まとめて効率的に稼働させています。

「命を無駄にしない」という理念は、肉としてではなく別の方法で形にしています。

 

ジビエファームにも来てもらいました。

 

 

 


参加者の声とまとめ

4Hクラブのこの会代表の古石さんは、

「鳥獣害対策は身近にあると思っていたけれど、知らないことがたくさんあり驚きました」

と感想を述べられていました。

三角・戸馳島は、農家ハンターの鳥獣害対策ノウハウが詰まったモデル地区のようになっています。

暑い中、大変お疲れさまでした!

 

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2025.08.10

阿蘇市で通電シートと電気柵設置!イノシシ被害を防ぐ現場レポート

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年8月、彼らの現場で見て感じた事をレポートします。

 

阿蘇市のある地区にて、840mの通電シート(電線が織り込まれた防草シート)と電気柵を設置しました。
作業には地域の方約20名が参加。イノPからは稲葉たっちゃんと、特定地域づくり協定のメンバー・井手くん、JICAグローカルプログラムで研修に来ている竹村くん、橋本くんも加わりました。

当日の様子をお届けします!

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【レポートのポイント】
▶︎通電シートを設置
▶︎電気柵の支柱を設置
▶︎電気柵の電線張り
▶︎電気柵の電源装置の設置

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美しいカルデラでの早朝作業

阿蘇の美しいカルデラの中、夏の早朝に作業が始まりました。
地域の方によれば、すでにイノシシは出没しているとのこと。
まだ稲は食べられるほど実っていませんが、各所で足跡が見つかっています。山や川から、イノシシは静かに近づいてきているのです。

稲穂が実る前に、そしてイノシシが活発に動き出す前に——早めの対策が必要です。

 

 

 

 

① 通電シートを設置

まず通電シートを敷きます。
コンクリートから少し離すと通電効果が高まります。
位置を決めたら、杭で固定します。

場所のあたりをつけたら、杭で留めます。

 

 

杭を打ち込むのは難しくないですが、場所によっては地中が固く杭が入り込みませんでした。そんな場合はバール等を使って穴を掘ります。

 

 

② 電気柵の支柱を設置

杭を打ち終わったら、次は電気柵の支柱を打ち込みます。

 

 

 

③ 電気柵の電線張り

支柱を打ち込んだら、電線を張ります。今回はイノシシ対策のため、地面から20cm、40cmのところに2本設置します。
上から張ると2本ともたわまずにピンとなります。

 

 

 

井手くんも立派な戦力です!

 

人数が多い分、作業は順調に進みます。

 

こういうところは、見回りや草刈りの頻度がどうしても低くなりがちです。通電シートは価格が高めなので予算に合わせて部分的に利用するのもすすめています。

 

通電シートは、電線が織り込まれていることもあり価格は安くありません。草刈りがしづらいところなどで部分的に使用することも◎です。

 

電線の接続は結ぶだけでも可能ですが、通電効率を高めるため、電線の被覆をはがして直接結びました。ライターも現場で活躍です。

 

張り終えたら、地面からの高さが20cm・40cmになっているか確認します。これは効果的な防護のための重要なチェックポイントです。

 

④ 電気柵の電源装置の設置

 

最後に電気柵の電源装置を設置します。
管理者が操作しやすく、かつ動物や人が触れにくい場所が望ましいです。電気柵の内側に設置するのが良いそうです。

 

 

近くには子どもも住んでいて、今回、子どもたちがよく走り回っているところに電柵が設置されました。集落の方々は安全のため周知活動を行うことを話し合っていました。

 

 

写真では見えないところまで総延長840m。
シート敷き、杭打ち、ポール配り、高さ調整、電線張り。
大勢で取り組んだので4時間で終えました。暑かった〜!

 

大変お疲れさまでした!

 

 

先日、ソラシドエアさんと電気柵を張った経験から、若手3人も立派な戦力となっていました。

 

 

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2025.07.24

野生動物にとっての渋谷?水俣市の鳥獣被害と対策の実態

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年7月、彼らの現場で見て感じたことをレポートします。


水俣市で鳥獣対策のセミナーが行われました。県・市・林業組合・イノP、そこに水俣・津奈木地域の農家の方が集いました。

稲葉たっちゃんは、座学に加え、ワイヤーメッシュ柵を設置した圃場での現地研修を担当しました。

今回はその研修現場の様子と、会場近辺で行ったの鳥獣被害対策の調査をレポートします!

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【レポートのポイント】
▶︎行政・林業・農業が連携して挑む鳥獣害対策
▶︎防護柵:ワイヤーメッシュ柵設置の現場
▶︎水俣市における鳥獣被害・対策状況の実態調査

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行政・林業・農業が連携して挑む鳥獣害対策

水俣市東部センター葛彩館にて、「芦北地域における広域的な鳥獣被害防止対策に係る研究会」が開催されました。

水俣・芦北地域から農家35名、行政関係者25名が参加しました。

有害鳥獣対策は、一部だけで完結するものではなく、県・市区町村・林業・農業・民間が連携して取り組むのが望ましい課題です。というよりも、誰もが無関係ではいられない問題です。

水俣地域ではイノシシとシカによる被害が深刻で、令和5年度の被害額は約6,000万円にのぼります。被害の95%が果樹で、そのうち52%に樹体被害がありました。
令和6年のシカの捕獲数は4,200頭と、年々増加しています。

「隣には動物がいる」──そんな環境で農業を営む方も少なくありません。

 

 

林業関係の方から狩猟免許取得の声掛けもありました。
免許更新の折に、特に高齢の方はもう更新しないという声もあがってきます。高齢者へ更新の呼びかけだけでなく、若手への声かけも必要だと力強く話されていました。

 

ワイヤーメッシュ柵設置の現場へ

ワイヤーメッシュ柵がずらっと張ってある圃場へ行きました。

 

お米を植えてすぐに食べられてしまい、困っていたと地域の方が言いました。

イノシシもシカも訪れる水俣は、動物さんの渋谷のような場所と言えるかもしれません。

 

 

 

この圃場では、柵と、動物による掘り返しを防止する“スカート部分”を組み合わせて設置してありました。

 

 

農家ハンターはこのスカート部分を強く推奨しています。

地形の段差やわずかな隙間があると、動物たちは粘り強く掘り返して侵入してしまいますが、このスカートがあれば難易度が上がり、侵入を抑える効果があります。

さらに効果を高めるには、このスカート部分を畑の外側にもっと広く張り出してもよかった、とのアドバイスもありました。

この地域には現在、狩猟免許を持つ人がいないそうです。
特にシカ被害は災害リスクにも直結するため、地域内での相談と連携が必要だとたっちゃんは強調していました。

この地域には狩猟免許を持った人がいないそうです。
とくにシカ害は災害の被害に直結するため、たっちゃんは地域で相談していくことを勧めました。

 

町をぶらり現地調査へ

 

「耕作放棄地が増えてる!」

と、車道を走りながらたっちゃんは小さく叫びました。2,3年前よりも増えている印象だそうです。
わたしにはただの茂みと耕作放棄地の耕作放棄地の違いがはっきり分かりません。でも、たっちゃんは一目で見分けられます。

 

 

現役の畑の隣が耕作放棄地となると、やがて茂みに変わり、動物の潜み場になってしまいます。

高齢化・過疎化・耕作放棄地の増加──これらの要因が重なることで、農業や鳥獣対策にとっては好ましくない結果をもたらします。

高齢化・過疎化・耕作放棄地 の組み合わせは、農業や鳥獣対策には望ましくない結果になります。

 

見えてきた日本の里山のつくりと 災害

日本の里山集落は、山のすそに民家があり、その前の開けた日当たりの良い場所に畑や田んぼが広がっています。

 

イノシシは作物を食べるだけですが、水俣市で深刻化しているシカの被害は、食害にとどまらず土砂災害にまで及びます。

シカは樹皮を食べて木を枯らし(人間の帯状疱疹のように、樹皮を一周食べられると木は死んでしまいます)、
さらに下草を食べ尽くし、新芽が育ちません。根が張らず、土壌に土をとどめる力がなくなり、大雨の際に土砂崩れが発生する──という悪循環が起こります。

この構造を考えると、土砂崩れによる最初の被害は、山すその民家や住民に及ぶことになります。

 

シカは、農地を守るだけでは減らせない。捕獲しなければ個体数は減らないのが悩ましいです。

狩猟免許保持者がいなければ捕獲もできないため、狩猟免許取得を促進するのです。

 

集落でも、シカが木を食べた跡が分かる【ディア ライン 】も確認できました。

 

 

家にシカがたくさん来ることが見える防護柵です。

 

水俣に取材にお邪魔したのは初めてでしたが、県南のシカ害の深刻さが伝わってきました。

 

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2025.06.27

【南小国町 田尻轟地区】箱罠とカメラを設置!

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!

2025年6月彼らの現場で見て感じた事をレポートいたします。


南小国町の田尻轟地区で、箱罠カメラを設置しました。

もともとこのエリアの山の中には、たっちゃんと一緒に設置した箱罠がありましたが、イノシシさんのオフシーズンのため捕獲には至っていませんでした。そこでカメラ設置の依頼を受け、この日稲葉たっちゃんとお邪魔しました。行ってみると、箱罠は約2週間前、田んぼや畑に囲まれた池近く移動されたそうでした。しかし、現場を確認したところ、箱罠の設置場所としてはやや難があることが分かりました。
カメラ設置までの動きをレポートします。


【レポートのポイント】

▶︎箱罠とカメラを新たに設置
▶︎柵の内側から山中へ移動して再配置
▶︎設置は地域住民の皆さんで。
▶︎タイミングを見据えた捕獲活動


柵の中に侵入するイノシシの足跡

今回の設置場所は、地元の方々が知恵を凝らして設置した、メッシュ柵(山側)と電気柵(川側) の内側。にもかかわらず、柵の中にイノシシが侵入したとみられる形跡がありました。土手は掘り返され、田んぼの中にはイノシシの足跡、さらにはアライグマと思われる足跡まで。ここ最近は人の田植えなど人の動きがあったため、イノシシが警戒して気配が薄れていたようですが、活動を再開した様子です。

 

しかし、人間の生活圏(畑の隣など)への箱罠設置は適切ではないとの判断から、その場所でのカメラ設置は見送ることにしました。捕獲に至ったとしても、他のイノシシが農作物を食べに来るリスクが高まるためです。人間の生活圏で捕獲することは、「人間のところまで出ておいで」というメッセージになってしまいます。

新たな設置場所は柵の外、山の中へ

そこで、話し合いの上、柵の外にある山の中へ移設することを決定。設置作業は地域の方々の人手と知恵でスムーズに行いました。切り倒された木々を整理し、地面を平らにしながら箱罠を設置しました。特に注意したのは、メッシュ部分がイノシシの足に触れないようにたっぷりと土をかけること。イノシシはメッシュが蹄にはまるのをとても嫌がりますから、これはイノシシが警戒しないための重要なポイントです。

 

 

 

 

 

カメラ第1号を設置!

今回の作業では、田尻轟地区初のカメラを導入。たっちゃんが準備してくれたカメラは、今後のイノシシの動向を把握するための大切なツールです。カメラの設置はスムーズに進み、全体の作業時間は約50分ほどでした。

 

カメラの設置場所は、箱罠の入り口の反対側、かつ距離感が掴めるように斜めにするのが望ましいです。イノシシさんは警戒心が強いため、箱罠に入ろうとしたときに目の前から赤外線のライトが見えないようにします。

 

餌は柑橘と米ぬかを使用

罠には米ぬかと落ちていた柑橘類を使用。特に米ぬかは、罠の中だけでなく出入り口、10mほど離れた場所にも撒き、イノシシをうまく誘導できるよう工夫しました。今後、カメラで記録された写真はイノPへ送信され、地域のグループLINEに情報共有します。

捕獲はこれからが本番の季節!

7月以降はイノシシの活動が活発になる季節。たっちゃんの見解では、この時期を逃すのは非常にもったいないとのこと。捕獲の成果は、地域住民のノウハウ蓄積や、自信にもつながっていきます。

ちなみに、以前設置していた池のそばの箱罠では、箱罠よりもくくり罠の方が効果的だというたっちゃんのアドバイスがありました。箱罠は呼び寄せるやり方なので設置には向きませんが、特定の個体を狙って仕留めるくくり罠は選択として◎です。

鹿の気配もあり

さらに、設置場所ではシカの痕跡も確認されました。木の皮がめくれている箇所があり、これはシカによるものだろうとのこと。これから夏にかけて、捕獲頭数が増える季節に突入します。今後の成果に期待が高まります。

この日、阿蘇ではシカに見守られて帰路につきました。

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2025.06.13

農水省職員がプライベート研修に!ジビエ・害獣対策のリアル

こんにちは!農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです。
2025年6月、農林水産省の職員の方々が、プライベートで研修にお越しくださいました。今回は、その現場でのやりとりや学びをレポートします!

この日お越しくださったのは、農林水産省よりお3方。

  • 九州農政局  谷川 智雄さん

  • 九州農政局  玉城 寛人さん

  • 本省鳥獣対策室 佐藤 駿悟さん(東京から!)

仕組みを作る側、日本の鳥獣対策の“ど真ん中”にいる皆さんです!

 


【レポートのポイント】
▶︎三角町の鳥獣被害対策
▶︎ジビエファーム・解体施設運営のリアル
▶︎狩猟文化の有無
▶︎箱罠の選び方と注意点
▶︎柵設置のコツ
▶︎イノシシパウダー化マシーン
▶︎まとめ


 

2024年度は、全国的に捕獲頭数が多かったそうです。農家ハンターの本拠地・宇城市三角町の2024年度のイノシシさん捕獲頭数は1016頭と過去イチです。

三角町の鳥獣被害対策

狩猟文化の有無

三角ではもともと捕獲文化がなく捕獲技術を持った人が地域にいませんでした。
農家ハンターに当初から多大なご協力をしてくださっている大師匠・山本さんが三角じゅうを回っていて、それを引き継ぐように稲葉たっちゃんと井上くんが取り組んできました。

それから時間をかけ、住民自身が捕獲できるように技術を共有してきました。

いろんな地域で話を聞くと、もともと狩猟文化があるところは動物がいる環境も食すのも当たり前でした。対策に従事する人もいて、そこまで困っていない印象があるそうです。

 

狙いは動物たちの「絶滅」ではなく、「山から人里への出没数を減らす」こと。
“濃くなった部分を薄める”という感覚が大切です。

 

解体施設運営のリアル

 

 

捕獲頭数が左右する運営の難しさ

ジビエの解体処理施設であるジビエファームは、農家ハンターから生まれた株式会社イノPが運営しています。この解体施設をつくる費用を確保するために会社を立ち上げて今に至ります。実際にやってみて、直面した課題がいくつかあります。

  • 季節によって変動する捕獲数

  • 売れる肉と売れない肉の差

  • 味と品質の維持

  • 食肉にならない部位(残渣)の処理先の確保

残渣の処理は、どこが引き受けてくれるかは自治体によってまちまち……
家畜ではないのと民間施設の解体処理施設であることから処理先の確保が一筋縄ではいかず非常に大変だったようです。

 

捕獲が増えると、「命を無駄にしたくない」という想いから、解体施設の設置やジビエ利活用をする動きが出てきます。
命を無駄にしたくないという思いの表れだと思います。

しかしこれまでの経験から、有効活用・利活用したい気持ちは重々わかるものの解体施設をつくるのは慎重に、と稲葉たっちゃんは普段から伝えています。

 

ジビエ活用までのおすすめフロー

ジビエ活用までのおすすめフローはこちらです。

減溶化設備を整える(イノシシさんを5時間でパウダー状にします。堆肥としての活用を検討中)

どのくらい、どんな個体が捕獲されるかを知る

解体施設をつくっても採算取れるか?
肉の取引先はあるか?
残渣はどこが引き取ってくれるか?
人的経済的に運営できるか? を検討

見通しがたてば解体施設をつくる

 

現場で見た!箱罠の選び方と注意点 

箱罠には多様な種類がありますが、重要なのは「どんな個体を捕獲したいか」によって適切なタイプを選ぶこと。

  • 感度が高すぎるとウリ坊だけがかかって親を逃してしまう

  • 取り逃がした親は二度と罠にかからないことも

「獲りたい個体に合わせた罠選び」が捕獲率を高めます。

止め刺しと電気ショッカーの選択肢

現場での精神的負担と対策

止め刺しの道具、電気ショッカーも実際に持っていただきました。

 

捕獲にかかる最大のハードルが止め刺し。
狩猟とは違い、有害鳥獣対策のために捕獲する人は「獲らなくていいなら獲りたくない殺したくない」という思いを持つことが多いです。精神的ストレスが大きいため、止め刺しの方法は負担が小さいことが重要です。槍をつかうところも多いですが簡単ではありません。そして心身ともにすり減ってしまうという経験をたっちゃんも井上くんもしてきています。

空気銃は人間にも動物にもストレスがありません。が、銃を持つのは簡単ではないので、やはり電気ショッカーが扱いやすいです。

手作りする人もいますが、それだと電気が流れていることが分からなかったりしてヒヤリハットが多いため、安全面に配慮されたものを購入することをおすすめしています。

 

柵設置のコツ:メッシュ柵と金網柵

メッシュ柵の設置方法

メッシュ柵は害獣対策をしている地域ではどこでも見かけます。ブログでも何度か取り上げていますが、その向きは裏表が逆になっていることも多く、どうやら納品の仕方に原因があるようです!
納品時、表・裏・表・裏とたがいちがいに重ねてあるそうです。重ねてある通りに設置すれば、たがいちがいの柵になってしまうというわけです。

「納品の仕方を変えてもらったらいいのでは……」とわたしは思いましたが、コンパクトにするためには致し方ありません。

 

 

両端を隣の柵と1マス分被せるのも重要です。
害獣たちは畑に入れる抜け道をぐるぐると回りながら探し、「ここ弱そう、いけるかも」な場所があれば掘ってすり抜けようとがんばります。その隙を与えないようにするために、両端を重ねて守りを固めます。重ねることを計算に入れて、必要数を調達する必要があります。

 

金網柵

ゴリ押しなのが金網柵です。地面の状態に合わせて張れるため、隙間ができません。L字で張るので、動物が掘って中に入ることができないためです。人手や手間はかかるしコストもかかります。でもその分効果があります。しっかり張れば動物の侵入も、食害によるストレスもありません。

全てを金網柵で張るのはコスト面で難しい場合、地面がごつごつ/凸凹した場所は金網柵にし、それ以外はメッシュ柵にするなどして場所ごとに検討してもいいでしょう。

減溶化施設「イノシシパウダー化マシーン」

総重量400kgを一度に、まるごと処理できます。

休眠預金を活用して導入した、新イノ粉マシーン。解体に向かない個体、肉にならない部分の処理の行き先としてはもちろん、この減溶化マシーンの運用をしていくことで、地域で鳥獣対策する人の後押しもできます。

止め刺しとその後の処理が2大難関の害獣被害対策。山での埋設処理が多いですが、国の研究機関が作成したガイドブックによれば、掘り起こしが起きない深さとしては、150cm以上の深さがあることが望ましいとされています。浅いと掘り起こされる可能性があるからです。
150cmを掘る……想像できますか?汗だくで体力も時間もすり減ります。わたしはたぶん、ぶっ倒れます(・∀・) 施設はその処理を担ってくれます。

無機質と混ぜて堆肥とすれば、畑への散布や販売の道も見えるかもしれません。

 

 

 

古石さんのいちじくハウス

TOBASE  Island Works代表の古石さんのいちじく農園も訪ねました。いちじく栽培についてや特定地域づくり事業についての意見交換などしました。
(特定地域づくり事業についての取り組みはこちらをご参照ください https://farmer-hunter.com/blog/5332

特定地域づくり事業によって就農者を増やしたり地域の人口減少を食い止めたいという思いがあると古石さん。

いちじくが実っている様子を見るのは初めてで、3ヶ月でこんなに大きくなるんだ!と驚きました。

 

 

柿の木の下で、ヤギを眺めながらのまとめ

宮川洋蘭の柿の木ガーデンで、クロストーク。
ヤギを眺めながら……というよりもヤギも混ざってきていました。

今回はスケジュールはある程度決めていたものの、聞きたいことに合わせて時間を調整しました。ジビエファームで2時間も話したのは初めてでした笑

政策をつくっていく皆さんです。
質問する姿勢や内容、まなざしから熱意が伝わってきました。
公も民も一緒に、ですね。今回のプライベート視察が政策に活かされていくことを願っています。

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