農家ハンター応援団フォトライターの髙木あゆみです。
熊本県青年農業者クラブ(通称4Hクラブ)の皆さんが、農家ハンターの拠点・戸馳島を訪れました。若手就農者や行政関係者など、次世代の農業を担う方々が集まり、鳥獣害対策の「い・ろ・は」を現場で学ばれました。
この記事では、学びの様子と農家ハンターが伝えた“実践型の鳥獣害対策”のポイントをレポートします。
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【レポートのポイント】
▶︎ 若手農家と行政が現場で学んだ「リアルな鳥獣害対策」
▶︎ イノシシ対策に欠かせない電気柵と箱罠の正しい運用
▶︎ 残渣処理や耕作放棄地の管理など、日常の工夫が被害防止につながる
▶︎ 命と向き合う現場での“止め刺し”や減溶化施設の実情
▶︎ 地域で維持・管理する体制づくりの大切さ
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農業と鳥獣害対策は切り離せない
参加者は若手農家の方々や、農水課など農業関連の行政担当者。
近年、野生動物による農作物被害は各地で増加しています。農家ハンターでは「農業をする以上、鳥獣害対策はセットで考えること」と伝えています。それほど、鳥獣害は農業と切り離せない課題になっているのです。
実際、三角町ではかつて捕獲数ゼロだったイノシシが、わずか4年で1000頭獲れるようになりました。「うちは関係ない」と思っていた地域でも、予防のための知識が欠かせません。
無意識の“餌付け”を防ぐ|残渣処理と耕作放棄地の管理
残渣の処理
収穫後の残渣を防護柵の外に捨てると、イノシシやシカを呼び寄せてしまう原因になります。味を覚えた動物は、どうにかして畑に侵入しようとします。さらに食べ物が豊富になると、動物の栄養状態が良くなり、飢えずに越冬して数が増えることも。無意識の餌付けをしないことが第一歩です。
耕作放棄地の管理
イノシシは体を隠せる場所を好みます。草が茂った放棄地は、格好の潜み場です。地域で定期的な草刈りを計画し「隠れ場」をなくし、とどまりにくい環境を整えましょう。
イノシシは学ぶ動物|電気柵の正しい使い方
イノシシやシカは非常に学習能力が高い動物です。
光・音・匂いなどを利用した忌避グッズもありますが、次第に「怖くない」と学習してしまいます。
一方、その学習能力を逆手に取った対策が電気柵です。「痛い!怖い!」と体験することで避けるようになります。
ただし、昼間に電気を切っていたり、電圧が弱い状態が続くと「怖くない」と覚えてしまいます。
→電気柵は“常に適正な電圧で通電”させること、そして“設置後の管理”が何より大切です。
ソラシドエコファームで学ぶ電気柵体験
戸馳島にある「ソラシドエコファーム」では、ソラシドエアさんと協働して電気柵を学ぶ体験研修が行われました。
この日測定したところ、なんと8000ボルト!
葉っぱで電気を感じたり、手で触れてみる参加者もいて、現場はヒヤヒヤと笑いに包まれました(※真似はしないでください😅)。
畑と道路の段差がある箇所では、通常より1段多い3段電線を設置。
一方で、芋の葉が電線に触れる部分もあり、「電気柵と作物は50cm以上離す」という基本ルールを再確認しました。(NG例もしっかりここでお伝えします♡)
箱罠の運用を学ぶ|Q&Aで現場の疑問を解決
箱罠の前では質問が飛び交いました。
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Q:エサはどのくらいの頻度で入れる?
→ 食べ具合を見て判断します。週1回程度は見に来ます。 -
Q:両開きと片開き、どちらが良い?
→ 両開きだと落ちるのにタイムダグがあるため片開きを採用しています。 -
Q:罠カメラの電池は?
→ スマホで確認。頻度は使用状況によります。 -
Q:この箱罠で年にどのくらい獲れる?
→ 2回ほど。 -
Q:エサを食い逃げされることは?
→ ある。罠の外から食べたりトリガーの周りだけ食べることもあります。
現場での工夫が細部に光る内容でした。
かたつむりを乗っける古石さんチラリ
箱罠のそば・田んぼの横にイノシシさんの足跡発見!
地域全体で取り組む鳥獣害対策
柵を設置しただけでは終わりではありません。
重要なのは「どう維持・管理するか」を地域で話し合うこと。
地域ぐるみで取り組むことで、対策が“絆を深める活動”にもなります。
命と向き合う現場|止め刺しと減溶化施設
農家ハンターでは、なるべく動物に恐怖や痛みを与えないよう「電気止め刺し機」を使うことが多いです。
ただし、止め刺しの現場は精神的な負担が大きく、「空気銃による止め刺し」が最もストレスが少ない方法とされています(ただし免許・コストの問題あり)。
また、イノシシを粉末化する減溶化施設は、鳥獣害に悩む地域にとっての救世主。
処理コストはかかりますが、埋設するより労力も軽減できます。灯油45リットルと電力を使うことから、まとめて効率的に稼働させています。
「命を無駄にしない」という理念は、肉としてではなく別の方法で形にしています。
ジビエファームにも来てもらいました。
参加者の声とまとめ
4Hクラブのこの会代表の古石さんは、
「鳥獣害対策は身近にあると思っていたけれど、知らないことがたくさんあり驚きました」
と感想を述べられていました。
三角・戸馳島は、農家ハンターの鳥獣害対策ノウハウが詰まったモデル地区のようになっています。
暑い中、大変お疲れさまでした!