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2024.12.28

2024年の締めくくりに、ジビエにICT機器にとアニマルウェルフェアに

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2024年12月彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。今年最後のレポートです。

 

熊本県が取り組んでいる、有害鳥獣対策実践塾 第3回目が行われました。会場は戸馳島、県内の鳥獣対策担当課の方が20名ほど集まられ、オンラインでは県内外から視聴されました。午前から夕方まで、みっちり学ぶ会です。

 

プログラムはこちら》》

⚫︎ICTの機材や特徴について

⚫︎箱罠の現場で実践を見る

⚫︎ジビエの活用について

⚫︎アニマルウェルフェアについて

 

ICTを使った対策に必要なもの

農業との両立、本業との両立を実現するためには、ICTは強い味方。その機材にも種類があり、地域によって適しているものを選びます。
携帯電話のキャリアを使って通信するもの、独自の電波を使うものがあり、コストもさまざまです。いろんなタイプを紹介しました。

 

 

罠に動物がかかり、設置しているセンサーが作動したら、その信号を親機がキャッチして携帯電話に通知する仕組みになっています。センサーからの信号をキャッチし情報を飛ばす中継機も必要です。中継機は携帯電話の電波塔があるような場所に設置します。

 

中継機なしで直接通知が届くものもあります。無線スタイルや携帯電話のキャリアを使うものもあり、ランニングコストもさまざまです。中継機なしで直接携帯電話に通知が届くものもあります。性能や地域に合わせて選ぶことが大切です。

 

 

Q 何年ぐらい使える?

A モノによって、使える年数は変わるが8年とされていても6年くらいの感覚がある。九州は台風の影響か壊れやすいように感じるので、ジップロックに入れたりして長くもつようにしている。

 

Q ICTの導入によって見回りの簡略化はできるか

A 毎日の見回りは不要になる。しかし慣れずに導入をやめたところもある。最初の半年間が勝負です。その間、熱が冷める前に使い方をマスターするのが鍵。高齢者に立ちはだかる、スマホの壁を越えられたらICT導入の効果があります。

 

 

箱罠へ移動

 

市民の方が鳥獣被害に困ったら最初の窓口になるのが町の担当課。行政で機器や罠を導入することもあるしアドバイスも必要になるので知識が必要です。

 

 

箱罠こと、イノシシの習性、ICTのこと、捕獲のこと、質問の手もたくさん挙がります。

 

 

Q 箱罠は、どのくらいの頻度で動かすといいか?

A 最初の半年は置いてみる。初めの一頭に時間がかかるもの。あえて、入ったことのある場所の泥を入れたりしている。入るようになれば動かさなくていい。

 

Q カメラを置くなら、その位置は?

A イノシシさんのお尻側(入口側)に置く。フラッシュがあるので、箱罠側に置くと警戒するため。

 

Q 餌はどのくらい置くといいか

A その罠の特徴次第。簡単に落ちる罠は、少しでいい。自治体にある罠次第で決めるといい。

 

Q 電気止め刺し機を使うには免許がいるか

A 銃猟の免許は不要だが狩猟免許は必要。また、機器を自作する人もいるけど、ホームセンタークオリティになる。電気は見えないし危ないのでちゃんと買ったほうがいい。

 

 

 

ジップロックを活用して、機材を長持ちさせる工夫をしています。

 

 

 

ジビエファームへ

解体施設の紹介でジビエファームへ。

 

 

 

 

捕獲したシカさんイノシシさんの利活用のために、「解体施設をつくろう!」となりがちですが、「そこは慎重に」というのが農家ハンターの姿勢です。運営が大変だからです。産業家畜と違って野生動物はシーズンによって質も獲れる個体数、量が変わりますし、運び入れまでの時間や手際で品質が変化するので、誰が獲ったどんな動物も受け入れます!というのは難しいです。

また、ジビエとして買い取ってくれる先の確保も課題。あげるための肉なら簡単ですが売るための肉にするのはとても難しいのです。内臓など最終処理も課題でした。

 

ということで越えるハードルが思いの外多く、解体施設を運営するのは簡単ではないのが実情です。

一方で、堆肥化のマシーンは、鳥獣被害対策でどこでもぶつかる、「捕獲してどうする」という壁を低くしてくれます。捕獲後、埋める手間もなくどんな状態でもよく、活用できるからです。

 

ジビエの現状と課題

ジビエ利活用コーディネータの谷口秀平さんからの話もそれらにつながっていきます。

谷口さんは雲仙でイノシシの解体施設をしておられます。

 

 

今は大手企業もジビエに注目し始めているけど、大手さんとする場合は量の確保がまた課題だったりします。シーズンによってもとれる量が違いますし、味も変わります。

ジビエ施設運用の課題を、谷口さんはこうまとめられました。

 

課題》》》

①止め刺し技術・・・止め刺しに個人差があると味にも差が出てくる。講習会などの実施必要

②勘・経験・度胸 ではなく流通スタイルに伴った精肉をする・・・ばらつきをなくす!衛生面も精肉も。

③販売アイテムの偏り・・・売れる部位と売れない部位に偏りがある。加工品にするにも発注にはロットが必要になり、販路がない中で作るのは難しく余ってしまうことがある。

④価格の考え方・・・決まった量を同じ品質で出せないため、味の乗らない夏の分まで別のシーズンで賄おうとする。と、高くなってしまう。

 

 

 

動物の福祉:アニマルウェルフェア

講師は、東海大学農学部 動物行動学研究室の、伊藤秀一先生です。

アニマルウェルフェアの歴史から学びましたが、とても興味深かったです。

 

なぜここでアニマルウェルフェアを学ぶかというと……

命に関わることに携わる以上、学んでおく必要があると稲葉たっちゃんは考えています。動物を大切に思う気持ちは、愛護者だけではなく駆除に従事する人も含め多くの人に共通しています。駆除したくて命を奪っているわけではありませんが、農業や人的な鳥獣被害の対策や、森林の多様性などの面から避けて通れません。

 

アニマルウェルフェアと動物愛護の視点の違いも分かりやすかったです。
先進的とされるヨーロッパでの動物観の移り変わりや、アメリカやアジア、日本での取り組みなども教えていただきました。

 

 

 

 

アニマルウェルフェアは、動物に余計なストレスを与えない。ストレスを緩和する方法を選ぶ、ということのようにわたしは受け取りました。

 

アニマルウェルフェアの視点でいくと、動物園の動物は、いつも餌を適正量食べお腹は満ちても行動としては満たされません。野生の肉食動物は、獲物を捕まえて、皮や骨などをよけながら時間をかけて食べます。1日の大半を食事に関することに使います。動物本来のあり方に近づけるため、熊本市の動物園でもイノシシの子どもを形のあるままで給餌する「屠体給餌(とたいきゅうじ)」を定期的にしています。感染症などのリスクを考え頭や皮、内臓はとったイノシシさんですが、ブロック肉ではなく動物の形のままの姿、骨をよけながら食べることになります。

喜ぶ子もいれば慣れていなくて食べれない子もいるそうですが、食べた子はその給餌の後、ストレスを表す行動がしばらく減るそうです。

 

動植物園での屠体給餌の際、「餌となるイノシシさんのアニマルウェルフェアはどうだったのか?」という声もあったそうです。確かに。アニマルウェルウェアは0か100で語られるのではなく(ストレスフリー、ストレスゼロは無理なので)グラデーションの中でよりストレスのない状態にすることです。

そのためには、止め刺しまでの時間や仕方が影響します。罠にかかってから長時間拘束しない・止め刺しの際は急所を狙ってすみやかに仕留めることです。これは農家ハンターで心掛けていることで、ジビエハンター育成のHPでも記されています。

 

そしてまた、「止め刺しをする人のメンタルケアも重要だ」とたっちゃんは言います。精神的負担は相当なものだからです。理解が増え従事する人が増えることも重要ですが、ケアもセットで体制を整えていく必要性を感じます。

 

番外編:お昼ご飯はジビエランチBOX

今日のお昼ご飯は、松橋の野の花さんのジビエランチです。井上くんが捌いたイノシシさんを野の花さんがいろんな食べ物に変身させてくれました。メンチカツにボロネーゼ、洋風そぼろご飯にハンバーグ…ハムとイタリアンスープも添えて。

蓋を開けて第一声、「わぁ〜!」と声が上がりましたよ🎵

 

 

さて、今年もお付き合いいただきありがとうございました。来年も農家ハンターを追っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。良い一年をお迎えください。

 

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2024.12.19

鳥獣被害対策の担い手となる皆さんへ

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2024年12月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

鳥獣被害対策アドベンチャー開催

 

農林水産省による、鳥獣被害対策の担い手を支援するためのプロジェクトがあります。

どう鳥獣被害対策の活動をしていけばいいか模索する人が、すでに実施している団体のもとに集い、フィールドワークをするものです。株式会社パソナの農援隊が受託してプロジェクト【鳥獣被害対策アドベンチャー】を開催しています。農家ハンターも会場となっており、座学からフィールドワークまで、2日間かけて学ぶ講座が行われました。

 

 

今年も関東や九州各地から有志が集まりました。

・まちづくりに携わるので、その一環として鳥獣被害対策は欠かせないと思っているから
・水害の原因がとして、鹿の食害が大きな要因となっていることが分かり、人を巻き込んで対策をするためのヒントを得たい
・趣味で狩猟をやっているが、体系的に学びたいから
など、それぞれのバックグラウンドと参加理由がありました。

 

 

 

最初は座学。

鳥獣対策を実践する皆さんのための講座なので、失敗談も交えながら。

・イノシシが出始めの頃は、ネットでも情報は見つからなかった。だから対策も手探り。
「この土手、誰が掘った?」「誰が穴掘った?」という小さなハテナをそのままにしていたけど、それは「イノシシが来てるよ〜」のサインだった。そのサインを見逃したからここまで増えてしまった。鹿では失敗したくない。

・対策は、”獲る”から入りがちだが、基本は “守る”。
・地域の中で、最初は批判されたけど今では猟友会の皆さんにもご理解いただき、協力してやれるようになった。
・ITは味方。電柵のDX化でモニタリングできるようになっていたり、柵の点検アプリも開発されている。
・鹿は堆肥化できない。ペットフードには向いている。

などなど。

 

 

イノシシさんに会いに山へ

 

この日は、朝から箱罠にイノシシさんがかかっていたため、みんなで現場へ向かいました。車で20分、山の奥へ奥へと入ります。

 

箱罠にかかっていたのはメスのイノシシさんでした。

 

 

少し離れた場所で、皆さんに状況を説明しこれからすることや注意することなど話しました。 距離をとるのはイノシシさんを刺激し余計なストレスを与えないためです。

 

 

 

対策に従事する人にとって大きな関門であるのが【止め刺し】という命を止める作業と、その後の処理です。止め刺しは精神的負担もとても大きいものです。そのため、動物さんにとっても従事者にとってもできるだけ精神的肉体的負担の少ない方法を推奨します。

ということで、ここでは電気を使うやり方を見てもらいました。

 

この場面を皆さん静かに見守りました。

 

 

 

誰にでも、この止め刺しの現場をお見せするわけではありません。オープンにするような場面ではないということもありますし、人がいればいるだけイノシシさんにストレスを与えてしまいます。「学ばせてくれてありがとうという気持ちで、皆さんに見てもらいました」とたっちゃんは話しました。

 

余談ですが、たっちゃんや猪上くんにとって一番のやり方は空気銃です。銃免許が必要ではありますが、動物さんに近づかず、気づかれず、一瞬で仕留める空気銃がお互いにとって負担が少ないようです。ストレスが少ない分、お肉としても品質が良く美味しくなります。

 

 

猪上くん開発の運ぶ道具を使って、イノシシさんを車まで運びます。運び出しも結構な重労働、場所によっては車まで距離があることもありますし、70kgのイノシシさんだっています。この道具で、大きなイノシシさんでも1人で運べるようになりました。

 

今回のイノシシさんはメスで、鳴き声をあげたりと威勢が良く、とっても美人さんでした。ありがとう🙏

 

山を降りていると、とっても美しい景色!✨

 

 

焚き火とイノシシトーク

皆さんはそれから焚き火をしながら今日の感想を交えながらジビエBBQを楽しまれました。

 

バックグラウンドは様々だと先に書きましたが、サラリーマンをしながらできることをしようと狩猟免許を取ったという人もいましたし、できる範囲からスモールスタートしたいけどどう切り口を作るかといういう人もいました。

狩猟はしたいし、そのあと食すのも好きだけど、止め刺しはできれば避けたかった。でも、狩猟して食べる以上、向き合わなければと思っていますという声も聞かれました。

また、「空家対策をしているが、鳥獣対策も必要なことだと感じている。どう地域の人をまきこんでいくか」といった課題意識を持っている方もいました。農家ハンターもそうですが、鳥獣対策も空家問題も全国の過疎地域にある共通の課題です。そのため農家ハンターでも空家を買い、リノベーションして宿泊施設研修施設として活用しています。

 

質問もありました。

◆鹿がいることも多様性だと思うが、良い山とはどんな山ですか?

→どの視点から見るかによるけど、鹿が増え、下草を食べてしまったり好む樹を食べることで、特定の植物しか残らなくなるし育たなくなる。芽吹いたそばから食べられるため根がはらずにハゲ山のようになり山の力がなくなる。そうすると動物の種類も変わり、いなくなる種も出てくる。良い山とは多様な植物と動物がいる山だと思っています。

 

◆さっき止め刺ししたイノシシさんは今から食べれるか?

→食べようと思えば食べられるが、美味しいジビエにするためにはしっかり血抜きをして熟成期間が必要なのですぐに食べても美味しくない。なので今日は熟成した美味しいお肉を用意しました!

 

◆美味しいジビエとそうでないものの違いは?

→臭く感じるのは雑菌臭です。不衛生な状態で解体していたり、血抜きがうまくできていなかったり時間が経っていたりすると雑菌が増え臭くなります。季節や個体差もあるけれど、素早く血抜きをしっかりして、衛生管理された場で解体して、熟成期間をおけばおいしくなります。

 

 

 

 

同じ課題意識を持っているということもありますが、美味しいものを食べ、火を囲みながら話すと距離が縮まりますね。

 

 

翌日は地域の人に話を聞いたり電柵を張ったりと実践の日となりました。

 

 

参加された皆さま、2日間お疲れ様でした。それぞれの地でこれからますますご活躍されると思います!農業や狩猟をしていなくても、何かできることをという意識を持つ人がいるのは頼もしいなぁと感じたのでした。わたしもそろそろ……

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2024.12.11

ソラシドエコファーム#2 植樹と戸馳島散策

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2024年12月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

栗の植樹祭

ソラシドエアの管理職の方がおいでになった秋の日。

農家ハンターの活動や鳥獣被害対策についての座学に始まり、交流会などで盛り上がった翌日、2つ目のソラシドエコファームで苗木を植えました。ここは、7月に、それまで耕作放棄地となっていたかつてのみかん畑を再開墾したのでした。
その時の記事はこちら:https://farmer-hunter.com/blog/4719

 

果樹か何か収穫できるものを植えようと、セレクトしたのは栗。今は細い枝のような苗木ですが、4、5年すれば収穫できるまでに成長します。

 

この畑の前には学童もあるので、いずれ小学生と収穫体験ができたらいいね、と将来の楽しみがひろがります。

 

 

 

あっという間に30本以上の苗木を植えてしまい、土を元気にするために発酵した牧草を苗木の周りにかぶせました。雑草が生えるのも防いでくれます。これから寒くなるので、保温効果もあるでしょうか?

 

 

ご厚意で関係者からいただいたこの牧草。発酵して、とっても強い印象的な臭いです。「むぉっ!」となりながら運びました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸馳島散策

さて、植樹のあとは移動して島の西側へ。
まずは島屈指の人気スポット・若宮海水浴場。秋のキラキラした八代海を眺めます。

 

 

ビーチ前の戸馳神社にもお詣り。恋みくじもあるラブリーな神社です。

 

「こっちです!」と自然に誘導され、歩いて3分、住宅地の方へ向かいました。

 

ここは元は畑だったんですよ。あ、大きな機械でなんかやってますね」と宮川さん。

 

ん?

 

んん?

 

「あ、あれ?見覚えある人ですね」

 

という茶番劇の先には、稲葉たっちゃんが。
農家ハンターのこの流れ、ソラシドエアの皆さんも楽しんで(慣れて)こられたでしょうか。

 

ここはかつてさつまいも畑だったそうです。

畑をやめても、芋の生命力はとっても強くて、今も草と蔓が元気いっぱいです。そこをもし再開墾しようとしたらまずは根強い蔓と戦わねばなりません。手持ちの草刈機で刈ろうもんならすぐに絡まってしまいます。専用の刃もあるようですが広い土地だと大変です。たっちゃんが操作するこの機械は、蔓に負けない知恵の詰まった機械なのだそうです。ちょっとわたしは理屈は分かりませんが; さつまいもの畑をどうにかしたい人の強い味方なんですね〜

 

 

鬱蒼とした葉が生い茂りイノシシさんの隠れ場としては最高ですが、この畑の周りには民家があります。こういうところを放っておかず管理すのが被害を防ぎ町や農地を「守る」大きなポイントなのです。
ということで、ここを農家ハンターでまた再開墾し、管理していくことになりました。

 

機械も体験していただきました。

 

 

大型機械にわくわくする皆さんは少年のようでした。

 

 

ソラシドエアさんとは、芋の苗植えや芋掘り、草刈りなどをこれまで一緒にやってきました。畑を一つやっていくにも、いかに手や時間がかかるものか、体力の必要なものか体感されているかと思います(わたしも)。だからこそ 機械、すごい…!ありがたい…!とその文明に感服するのでした。

 

今回は役職のある皆さまとご一緒させてただきました。またおいでくださいませ〜!

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2024.11.29

地域の現在地を知る!カルテづくりマップづくり

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!

2024年11月彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

奥阿蘇にある南小国町の脇戸地区にお邪魔してきました。

 

初の試み 【 カルテづくり 】!

その地域の鳥獣対策の現状を確認するための、カルテをつくりました。鳥獣害対策の勉強会を地域で開催しているか、地域に狩猟免許者はいるかなどのいくつかの質問から、その地域の現在地を確認します。

 

 

脇戸地区は、これまで地区をあげての勉強会こそあっていなかったものの、自主的に学ぶ人は多く、守りも効果的でした。他にどんなことができるのか、その道筋を知るという意味でもこのカルテづくりは分かりやすいのではないかと思います。

 

今回のような勉強会を通して地域みんなで理解を深めることで共通認識が生まれ、防御力増し増しの地域になっていくでしょう!

 

 

 

 

衛星写真を見てみよう!

 

脇戸地区を写した衛星写真を用意しました。ここに◯シールを貼っていきます。

 

 

 

お母さん方も参加してくださいました。
「一緒にやっている」は鳥獣対策に強いのです!

 

 

 

 

「ここはいつも出るもんね」

「この辺から来とるごたね」

「ここが潜み場になっとる」

 

イノシシさん、シカさんと隣り合わせの暮らしで、みなさんよくご存知です。ちなみに、このセミナーがあった公民館付近もよく出ると言われました。

 

このマップづくりも「見える化する」ためのアクションです。

 

 

 

脇戸地区では地域ぐるみで防護柵を張っています。

「管理がよくできているからあまり動物が入っていないのだろう」と楠田さん。マップにするとそれがよく見えてくるため、自信にもつながっていくかもしれません。

 

◆共同で張っていると、人に迷惑かけるわけにいかないから、自分で独自に張った柵よりもしっかり管理しようという気持ちになる

◆せっかく張ってるから、点検して管理しとかんとね

 

そんな声も聞こえてきました。

 

 

見えてきたことは

◆自分の所有地のことは分かっていたが、マップにすることで全体がよく見える

◆守れているところは、目撃も少ない

◆よく守れているし、現場のことをみんなよく把握している

 

守りを固めるというのが鳥獣対策の第一段階ですが、柵があることで農作業がしづらくなることもあります。
「メッシュ柵がいいのか、電気柵がいいのかは場所によって違う。考えて使い分けよう」と、猟友会メンバーでもある方から呼びかけられました。

 

 

課題が確認できたことで、今後の方針も少しずつ見えてきました。

脇戸地区は夫婦一緒に来てくれる地域柄。やろう!と声を上げる人が、この地域に何人かいて、普段の農業の営みの中で協力して自主的に対策してきました。町からの働きかけではなく、「住民主体で問題意識を持ち、声を掛け合っている」と役場の方からお聞きした通り、とても前向きで、住民主体という地域の姿勢がよく見える場でした。

 

畑が隣の地区にあるという方、3反分の米を全部イノシシさんに食べられたそうです。1反300坪。おかげで収穫できませんでした。「まさかこんな被害に遭うとは…」と思っていたそうです。来年はそんなことのないよう、十分な守りができますように…!!!

 

野生動物との境界線は、過疎化・高齢化・離農者の増加・猟友会メンバーの高齢化や減少によって、もっと人間側に寄ってくると予想されます。放っておいても解決しないといつも講演で稲葉たっちゃんが話をします。だからこそ早めに手を打つ、町のみんなで共通の課題意識を持って学び、守っていくことが必要とされていくでしょう。

 

この、現場で結束力が増し、プラスのエネルギーで「よし、やろう!」となる雰囲気、みなさんかっこいい!

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2024.11.17

宮崎県 木城町からの視察 〜日本の未来とイノシシさん対策と

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2024年11月彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

この日は、宮崎県木城町から農家の方々と町役場の方がおいでになりました。

 

・食肉加工場・ジビエファーム

・箱罠見学

・意見交換会

3部をぎゅぎゅっと2時間コースの視察でした。

 

山が9割の木城町、対策はすすめてきた

町の9割が山という木城町、100ha分の畑をイノシシさん対策として柵で囲んでいるそうです。まさに「人が柵の中で仕事している状態」だとおっしゃっていました。

対策は地区のメンバーで自主的におこなってきました。狩猟免許を持っている方は、来られた4人中2人。みどり会という組織を組んで、箱罠をメンバーに配布し各々捕獲するスタイルで対策しています。

そういうわけで皆さんご経験と知識は豊富なようでした。

それでも、今の課題は「個人の守りではもう追いつかない」。危機感を募らせ、こうして視察においでになったということでした。

 

 

 

邪魔者だとしか思ってこなかった

 

 

農家が集まって、「農家が地域を守るために鳥獣対策していこう!」と始まった農家ハンターの活動。しばらくは捕獲したイノシシさんを埋設していたけれど、捕獲頭数が多くなり、いよいよどうするかという課題に直面した時に出した答えが、食肉加工場をつくるということでした。そして食肉加工場建設のための融資を受けるため、株式会社イノPを立ち上げました。今は、ジビエだけでなく堆肥・革製品・動物園の肉食動物にイノシシさんを提供する屠体給餌などで利活用し、そして各地域でセミナーなどの鳥獣対策サポートを行っています。農家ハンターがこれまでやってきたのは、「命を無駄にしたくない」という思いが軸にあるからです。

 

この一連の流れを井上くんがさくっと説明したとき、参加された方の
「自分たちは邪魔者として思ってなかった。たまたま獲れたらもったいないから捌いて食べるか、というくらいで…」という小さな声を聞きました。

 

稲作物を作っているという方は「田んぼにシカやイノシシが入ってくる。イノシシが畑に入ったら、稲が絡み合ってコンバインも通りにくい。収穫量が減るだけでなく、収穫の手間も大きくなる。」と話してくれました。

 

被害のある農家の方は、大切な農作物を食べられる・農地を荒らされる だけでなく、その対策に知恵や時間、労力、お金を使います。
そうしてせっかく張った柵がやぶられるとイタチごっこのような気分になって、そりゃあ腹も立つでしょうし嫌にもなるのではないかと思います。家に入ってくるアリにだって手を焼くわたしとしては、この状況に対峙する方が野生動物に向かって「もうあいつら嫌い!」となっても全然不思議ではないです。

 

でも、もしそんな”邪魔者”を、地域の宝にすることができたらば、それはやっぱり全国の希望になるのだとじんわり思います。だからこそ農家ハンターは全国のロールモデルになろうとしているのだと、応援団のわたしは思っています。

 

箱罠を前に

箱罠は数万円するものだし1人で設置するのは難しいです。木城町で取り入れている、組織で買って個人が管理というスタイルはいいなと思いました。

 

イノシシが入る罠と入らない罠の違い、イノシシにとって音はどうか光はどうかといった質問がありました。

 

イノシシさんは足元にも敏感なので、必ず土や葉で網目を覆います。また、一気に捕獲するというよりは、足跡からウリ坊がいるのか大人だけなのかなどを予測します。大人は慎重なのでなかなか箱罠の奥まで入ることはしません。なので、日にちをかけて箱罠の外からじわじわと奥の方まで餌を置くようにすると、少しずつ警戒心が解けて奥まで入るようになります。駆け引きです。

 

 

 

 

 

そんなときに理解と対策をすぱぱっと早くできるのがカメラですね。でもカメラも高いですからどこでも導入できるわけではありません。カメラがなくても観察していくことで見えていきます。

 

自分ごとになる1ステップ

 

 

意見交換会では、木城町の地図を見て、「ここに果樹園がある」「ここは柵を張っている」、「ここから来てるんじゃないか」「ここはよく出るんじゃないですか」とイノシシさんの動きや対策の状況を俯瞰して考えてみました。

対策をしっかりしている木城町、今後どうしていきたいかを自分たちで考えることが大切だとたっちゃんから話がありました。

自分たちが自分たちの集落をどうしたいのか話し合って決めることは、【自分ごと】となっていく1ステップです。

「やるのは自分たち。住民がやれるような仕組みをつくるのが行政」だとたっちゃんは言います。

 

 

高齢化と鳥獣対策

木城町では、高齢化も鳥獣対策に影響があっています。
これまで、「自分の畑は自分で守る」として、それぞれが対策をしてきたが、高齢化でそれがままならなくなってきている。

対策のできない畑があることで、他の農地に影響が出ているということです。

これは木城町に限ったことではなく他の多くの地域でも同じことが起こっていると思います。今は問題でないところも、近い将来同じ課題を抱える地域は増えていくでしょう。

ということで、「管理しやすい農地づくり」「鳥獣対策ありきの農地づくり」が必要になってきます。例えば、草刈りしやすい状態にして柵を張るなど。高齢化と鳥獣対策の必要性は同じように右肩上がりになっていくため、《地域ぐるみで》が大きなキーワードになっていくかもしれません。

 

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