農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年2月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。
大イノシシがかかった
「大イノシシが罠にかかった」
そう言って、稲葉たっちゃんと楠田さんは山に向かいました。
現場はこれまでにもイノシシさんを何度も捕獲してきた箱罠で、わたしも数回行ったことがありました。
通常、捕えられたイノシシさんは人間が近づくとそわそわと動き出したり、突進してきたり、時に威嚇の声をあげます。恐怖や脅威を感じて興奮状態に入ります。そのため、不用意に近づいてストレスを感じさせることのないように注意を払います。このときも距離を取り、隠れながら様子を伺っていました。
たっちゃんは、止め刺し(命を止めること)の方法として、空気銃を選びました。イノシシさんにも人にもストレスが少なく、またジビエにするのにも向いているからです。
わたしは空気銃で仕留める様子を見るのは初めてで少し緊張していました。
パスっと音が聞こえて、「おっ」とのぞいたけれど、倒れる音は聞こえない。暴れる様子もない。
それからもう一度。
それでも何も変化がありません。
空気銃が効かない
当たってないのかな?と思ったけれどそうではありませんでした。少し流血しているようだけど、様子は変わりません。
もう少し近づいてみることにしましたが、人間の姿が近くに来てもその大イノシシは何とも動じない。
気にもしていないような様子に驚きました。
結局、3発打ちましたが、空気銃よりもイノシシさんが強かったのです。
そこからは電気止め刺しに切り替えました。そのときも動き回り始めたのは終盤になってから。
どうしてこんなにも落ち着いていたのでしょう。
「自分の方が強いという自信があるから」
とたっちゃんが教えてくれました。
確かに、ボスの貫禄みたいなものがものすごくありました。もしも丸腰で戦えば、たっちゃんは良い試合をするかもしれませんが、わたしは間違いなく勝てません。それがわかっているから、精神的にも落ち着いているのだそうです。時々こんなイノシシさんがいるようです。
「大物はジタバタしない」というのは、人間の世界だけでなく動物の世界でも共通なんですね。
箱罠を補強するぐるぐるの極太ワイヤーも歯の力で引き抜いていました。
止め刺し、運び出し、運搬
息絶えたように見えても、確実にそうだと分かるまでは手を出すことはしません。力を振り絞って攻撃されることが実際にあるからです。特にこんなに生命力の強い相手だと、細心の注意が必要です。
運び出しも一苦労。なにせ重い。井上くん作の運び出し便利グッズは持ち合わせていなかったので、たっちゃんと楠田さん2人がかりで引っ張ります。手も痛くなる。
道路まで出て、ふうと一息。
軽トラまで到着したら今度は引っ張り上げねばなりません。
100kg超えているのではないかというほどの大きさですので簡単ではありません。これも二人がかりでどうにか。
こうして軽トラに載せて、ジビエファームに連れて行くのです。
これが、捕獲から運び出しまでのリアルです。
一人でやるのは大変。だから、地域の中で「これは◯◯さんの仕事」とせず、みんなで取り組むことが重要だとたっちゃんはいつも実体験をもって話をします。
自分に置き換えてみても、わたしも力がないので何かしたくてもできる自信はありません。精神的にも大きな負担になるし、運び出しもできない。一人なら「できないからやらない、やれない」となるけど、誰かと一緒なら「やれるかもしれない」「この部分ならできる」となっていくのだろうと思います。
捕獲した動物のその後
捕獲した動物は、その場に放置してはいけません。鳥獣保護管理法という法律で定められており、こうやって運び出すか埋設することになっています。
が、埋設も大変。穴掘りだけで時間も体力も使ってしまいます。でもこのように運び出しも楽ではありません。だから、ダメなんだけど、埋設までせずにざっと土をかけるだけで終わってしまう人も多いのだそうです。
全てのイノシシさんがジビエに向くわけではないし、販売はシーズンによって捕獲量も質も変わるためなかなか厳しいのが現実です。手間も大きいですし自分たちで食べるのでなく商品にするなばら施設も整えなければなりません。人手もいります。だけど埋めるだけというのは……
そこで活躍するのが、イノシシさんをまるっと投入してパウダーにするマシーンが活躍します。(楠田さんがイノ粉マシーンと呼んでいたような。。。)農家ハンターのマシーンは休眠預金の補助を受け、大きなサイズにチェンジしました。場所もジビエファームから移動。さらに本格的に稼働が進みます。
この日は試運転でした。極寒の中、マシーンからBBQの匂いがしてきて「美味しそうなにおい。。。」とみんなで呟きながら運転を見守りました。
以上、いつもとは少し違う現場レポートでした。