農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年7月、彼らの現場で見て感じたことをレポートします。
水俣市で鳥獣対策のセミナーが行われました。県・市・林業組合・イノP、そこに水俣・津奈木地域の農家の方が集いました。
稲葉たっちゃんは、座学に加え、ワイヤーメッシュ柵を設置した圃場での現地研修を担当しました。
今回はその研修現場の様子と、会場近辺で行ったの鳥獣被害対策の調査をレポートします!
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【レポートのポイント】
▶︎行政・林業・農業が連携して挑む鳥獣害対策
▶︎防護柵:ワイヤーメッシュ柵設置の現場
▶︎水俣市における鳥獣被害・対策状況の実態調査
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行政・林業・農業が連携して挑む鳥獣害対策
水俣市東部センター葛彩館にて、「芦北地域における広域的な鳥獣被害防止対策に係る研究会」が開催されました。
水俣・芦北地域から農家35名、行政関係者25名が参加しました。
有害鳥獣対策は、一部だけで完結するものではなく、県・市区町村・林業・農業・民間が連携して取り組むのが望ましい課題です。というよりも、誰もが無関係ではいられない問題です。
水俣地域ではイノシシとシカによる被害が深刻で、令和5年度の被害額は約6,000万円にのぼります。被害の95%が果樹で、そのうち52%に樹体被害がありました。
令和6年のシカの捕獲数は4,200頭と、年々増加しています。
「隣には動物がいる」──そんな環境で農業を営む方も少なくありません。
林業関係の方から狩猟免許取得の声掛けもありました。
免許更新の折に、特に高齢の方はもう更新しないという声もあがってきます。高齢者へ更新の呼びかけだけでなく、若手への声かけも必要だと力強く話されていました。
ワイヤーメッシュ柵設置の現場へ
ワイヤーメッシュ柵がずらっと張ってある圃場へ行きました。
お米を植えてすぐに食べられてしまい、困っていたと地域の方が言いました。
イノシシもシカも訪れる水俣は、動物さんの渋谷のような場所と言えるかもしれません。
この圃場では、柵と、動物による掘り返しを防止する“スカート部分”を組み合わせて設置してありました。
農家ハンターはこのスカート部分を強く推奨しています。
地形の段差やわずかな隙間があると、動物たちは粘り強く掘り返して侵入してしまいますが、このスカートがあれば難易度が上がり、侵入を抑える効果があります。
さらに効果を高めるには、このスカート部分を畑の外側にもっと広く張り出してもよかった、とのアドバイスもありました。
この地域には現在、狩猟免許を持つ人がいないそうです。
特にシカ被害は災害リスクにも直結するため、地域内での相談と連携が必要だとたっちゃんは強調していました。
この地域には狩猟免許を持った人がいないそうです。
とくにシカ害は災害の被害に直結するため、たっちゃんは地域で相談していくことを勧めました。
町をぶらり現地調査へ
「耕作放棄地が増えてる!」
と、車道を走りながらたっちゃんは小さく叫びました。2,3年前よりも増えている印象だそうです。
わたしにはただの茂みと耕作放棄地の耕作放棄地の違いがはっきり分かりません。でも、たっちゃんは一目で見分けられます。
現役の畑の隣が耕作放棄地となると、やがて茂みに変わり、動物の潜み場になってしまいます。
高齢化・過疎化・耕作放棄地の増加──これらの要因が重なることで、農業や鳥獣対策にとっては好ましくない結果をもたらします。
高齢化・過疎化・耕作放棄地 の組み合わせは、農業や鳥獣対策には望ましくない結果になります。
見えてきた日本の里山のつくりと 災害
日本の里山集落は、山のすそに民家があり、その前の開けた日当たりの良い場所に畑や田んぼが広がっています。
イノシシは作物を食べるだけですが、水俣市で深刻化しているシカの被害は、食害にとどまらず土砂災害にまで及びます。
シカは樹皮を食べて木を枯らし(人間の帯状疱疹のように、樹皮を一周食べられると木は死んでしまいます)、
さらに下草を食べ尽くし、新芽が育ちません。根が張らず、土壌に土をとどめる力がなくなり、大雨の際に土砂崩れが発生する──という悪循環が起こります。
この構造を考えると、土砂崩れによる最初の被害は、山すその民家や住民に及ぶことになります。
シカは、農地を守るだけでは減らせない。捕獲しなければ個体数は減らないのが悩ましいです。
狩猟免許保持者がいなければ捕獲もできないため、狩猟免許取得を促進するのです。
集落でも、シカが木を食べた跡が分かる【ディア ライン 】も確認できました。
家にシカがたくさん来ることが見える防護柵です。
水俣に取材にお邪魔したのは初めてでしたが、県南のシカ害の深刻さが伝わってきました。