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2025.04.28

特定地域づくり事業協同組合で地域を守る!戸馳島で「TOBASE Island Works」発足

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年4月、彼らの現場で見て感じた事をレポートいたします。

 

 

熊本県・戸馳島にて、新たに結成された「TOBASE Island Works協同組合」。
特定地域づくり事業協同組合制度を活用したこの取り組みは、過疎地域における雇用の創出や移住・定住促進につながるものです。熊本県知事への表敬訪問の様子も含め、熱気と挑戦のリアルをレポートします!


【レポートのポイント】

▶︎特定地域づくり事業協同組合制度
▶︎TOBASE Island Works協同組合設立
▶︎熊本県知事を表敬訪問


特定地域づくり事業協同組合制度

『特定地域づくり事業協同組合制度』について、ご存知ですか?

このたび、イノP(農家ハンターから生まれた株式会社で、ビジネスの力で有害鳥獣対策に取り組みます)は、果樹作農業の古石農園、車エビ養殖の吉本水産、蘭と果樹の宮川洋蘭と共に、この制度を活用した取り組みを始めることとなりました。

 

特定地域づくり事業協同組合制度とは?

 


総務省のHPより
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/tokutei_chiiki-dukuri-jigyou.html

 

ざくっと言えば、「組合で人を雇い、その人材を組合員の各事業でシェアしようね」というものです。
1事業者だけでは従業員の雇用は難しいけれど、年間で人手が必要な時期がある。そんな事業者たちが、それぞれの繁忙期と閑散期のズレを利用し、年間を通して “仕事がある” 状態を作ります。

 

 

TOBASE Island Works結成

安定した雇用を生み出すことは過疎に歯止めをかけるため欠かせません。しかし、特に過疎地域ではそれが難しいのが現状です。戸馳島でも例外ではありません。

そこで、組合を発足し特定地域づくり事業協同組合制度を活用することになりました。
果樹作農業の古石農園、車エビ養殖の吉本水産、蘭と果樹の宮川洋蘭、そしてイノPの4事業者で立ち上げたこの組合を《TOBASE  Island Works協同組合》と名付けました。

収穫時期の異なる農業漁業や、野生鳥獣を相手にするイノPには、とてもありがたい仕組みです。

 

組合から派遣される職員第一号が井手勇希くんです。宮崎からの移住者です。

教職を志す井手くん、先生になる前に知見を広げ、いろんな経験を積みたいと手を挙げて参画しました。

やる気抜群!地元の宮崎弁が親しみやすく、なんだかみんなの弟のようにかわいくて何事にも一生懸命、地域のみんなに愛されること間違いなしです!

 

 

熊本県知事表敬訪問

宇城市の末松直洋市長、熊本県中小企業団体中央会の西尾浩明さんともに、TOBASE Island Works協同組合の構成メンバーそろって熊本県知事に表敬訪問に行きました。特定地域づくり事業協同組合として県より認定を受けたこと、そして今後の展望について報告しました。

 

左から、末松宇城市長・古石代表理事・木村県知事

 

 

 

組合の代表である古石恭介さんからの挨拶の中に、こんな言葉がありました。

「地域の担い手の育成や確保につなげたいと期待しています。また、(派遣された職員は)業種も経営理念も異なる複数の事業に関わることで、さまざまな視点を取り入れ、多くのスキルを身につけることができます。成長した社員が独り立ちする時、地元に根を張る自分たちがサポートしていきたいです。」

地域や人手を必要とする組合の構成員にとってプラスになるという視点にとどまらず、従事する人にとってもプラスになるよう動き育てていくという姿勢がTOBASE Island Worksの魅力だと思います。

 

宇城市の末松直洋市長 もご挨拶くださいました。

「宇城市でも特に人口減少・高齢化の著しい戸馳島。地域を担う基幹産業や地域経済の衰退、さらなる人口減少や悪循環が危惧されます。この協同組合の設立は新たな雇用が生まれ、地域外からの移住定住につながり、後継者や就農者の獲得も期待しています。」と話されました。

2月に市長になられたばかりの末松市長、人口減少や地域の衰退への懸念以外にも空き家問題など地域の課題にも触れながら話されました。

 

 

 

最後に、木村敬県知事から心のこもったメッセージを届けてくれました。

県知事が総務省に在籍されていた頃、島根県の海士町の高校生が卒業後も島で生活できるようにという課題から発案し制度設計に関わってこられた制度です。 思い入れも一塩のようでした。

「戸馳島でこの組合ができたことを、自分ごととして嬉しく思っています。この制度を考えるにあたり、農業と漁業の連携モデルは理想的でした。そこに有害鳥獣の駆除という公共的な事業の素晴らしい組み合わせが実現しました。円滑に実施されるよう県もサポートしていきます。なんでもご相談ください。」

 

 

井手くんやる気十分です!この制度によって職員として働けることの感謝を伝えていました。

 

 

従業員をただ雇うのとは異なり、初めての雇用形態に挑戦することになります。ワークバランスや連携など、やっていく中で課題が見えてくることもあるかもしれません。しかし代表の古石さんと吉本さんも仕事は熱心、ハートはあたたかい。気持ちの良いお人柄で、そこに宮川さんと稲葉たっちゃんがいます。事務局には楠田さんもつき、「みんなにとって良い」を目指せることと確信しています。

 

 

せっかく県庁に来たので、関係各所にご挨拶に回りました。

稲葉たっちゃん、県から有害鳥獣対策の事業を受託しているため、歩けば歩くだけ「稲葉さん!」と声をかけられていました。人気者〜!✨

 

 

 

緊張から放たれた皆さん、ルフィとも記念撮影してきました。

「とくち王に、おれはなるっ!!!」

 

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2025.04.13

バイオ炭の力と、米農家のホンネ、語り合う夜

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年4月、彼らの現場で見て感じた事をレポートいたします。

2024年7月に続き、2回目の開催となった 《車座》に参加させてもらいました。今回は、「バイオ炭」についての講習会と、恒例の交流イベント「車座」の2部構成でした。


【レポートのポイント】

▶︎カーボンクレジットとは?
▶︎もみ殻を炭にする機械「炭ちゃん」
▶︎コメ農家の話 令和のコメ騒動など
▶︎とばせ車座での交流と語らい

 


講習会のテーマは、「農業 × 環境 × ビジネスチャンス?」 

・セミナー①(株)JIZOKU 片岡さんによる「農業由来のカーボンクレジット活用で農村活性化を目指す」

・フィールドワーク もみ殻をくん炭にする”炭ちゃん”マシーン見学

・セミナー②(株)内田農場 内田智也さんによる「最近のコメ騒動について米農家のホンネ」

そしてお楽しみの宴・車座です。

 

カーボンクレジット活用

第一次産業における温室効果ガスの排出量は、全体の4分の1を占めており、農業のあり方は気候変動と密接に関係しています。農業で対策ができると、その影響はまた大きくなるということです。

一次産業におけるカーボンクレジットの創出支援事業をおこなう、株式会社JIZOKUの片岡慶一郎さんと、富山で頑張る大学生の関本有太郎さんが話を聞かせてくれました。

カーボンクレジットとは、CO₂の排出削減や吸収を実施した企業Aが、その成果分のクレジットを発行し、それを排出企業Bが購入することで、自社の排出量をオフセットできる仕組みです。

例えば、あなたがガソリン車で移動して排出したCO2分を、植林をした人からクレジットを購入して「わたしがCO2出した分、これで相殺ね」とすることです。

 

 

 

 

片岡さんにカーボンクレジットの仕組みについて詳しく教えていただきました。

農業分野でどんなアクションが温室効果ガスの排出を抑制できるかというと、もみ殻、竹、おかくず。畜産廃棄物などを炭に加工して農地に散布するなど。また、田んぼから出るメタンガスも排出量が大きく、対策として秋に稲藁をすき込むのは効果的なんだそうです。

 

排出削減量の算出はとてもややこしいですが、JIZOKUさんのような会社がそれを担い、クレジットを購入してくれる企業とのマッチングも引き受けています。

バイオ炭!もみ殻を炭化する “炭ちゃん”が戸馳島に!

九州に一台しか設置されていない、もみ殻を炭にする”炭ちゃん”。

まさか、農家ハンター/イノPの拠点である、戸馳島にあるとは…!!

実際に見てみよう!ということで、導入した農家の吉村さんの畑にお邪魔しました。

Jクレジットを想定したこと、もみ殻くん炭を活用した自然農法に興味を持って取り組んでいるそうです。

 

 

 

 

えっほ えっほ 3歳も一生懸命運びます。
もみ殻は雨で多少濡れても燃えるのには支障がないそうです。

パウダー状のくん炭。軽くて風に舞うので土にすき込んでしまうまでがちょっと大変なようですが、土壌でCO2をぐぐっと抑えててくれるパワーを持ってます。

農家ハンターでも、Jクレジットにチャレンジしていきます!

 

米農家に聞く米騒動

 

今、問題になっているコメ騒動について、そして当事者はどう見ているのか、お米農家の内田智也さんが彼の目線でお話をしてくれました。

 

 

 

就農者が減ることについて、意見を求められるシーンもありました。

「集約されていくことが必ずしもマイナスばかりではありません。しかしパイプラインや用水路の管理は自分たち農家だけでは賄いきれない。確かに就農する人が減り、同時に年々作業する人が減っている。継続していくためには人手が必要という側面もあります。」

 

 

害獣対策目線の話もありました。

「害獣による被害があるかないかを考えて作付けするようになりました。とうもろこしはイノシシの大好物ですが、そこが餌場・潜み場になれば周りに迷惑をかけてしまいます。だから被害があるところは、とうもろこしではなく米を作るようにするなど工夫しています。」

 

コメ騒動について、当事者の声を聞くことはなかなか機会がありませんでした。立場・角度によって見方は異なるでしょうし意見はそれぞれありますが、その一つに触れられました。冷静な声を聞く機会となり、ありがたかったです。

 

車座!宴!

 

いわずもがな楽しいのがこの時間、お気に入りのおみやを持って皆さん集まりました。

新メンバーの井手くんは、地元宮崎仕込みのチキン南蛮を作ってきてくれたり、絶品トマトや車海老、おすすめの大学芋など豊富ないろいろが揃いました。
楠田さんによるイノシシのペッパー焼きも好評でした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キッチンカーごと来てくれる強者もいました笑

 

 

なんだか大事なことも話されていたように思うのですが、とにかくいろんな人といろんな話がおもしろくて、おいしくて、すみません、大事なところを覚えてません!笑

ただただ、愉快な皆さんがここに集まり、職種や年齢を越えてあーだこーだ未来の話をする、この輪が最高だと思う夜でした。

 

 

 

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2025.03.31

【熊本県宇土市上松山地区】害獣対策マップづくり

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年3月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

宇土市の上松山地区にお邪魔してきました。この日、宇土市の農林水産課主催で鳥獣害被害対策のためのセミナーが行われ、地域の方14人が集まりました。

 

《今回のレポートのポイント》

・宇土市上松山地区の鳥獣害被害状況
・害獣対策のためのマップづくりについて
・マップから見えた宇土市上松山地区の害獣対策状況と課題


宇土市上松山地区のイノシシ出没状況

国道3号線から入ってすぐのこの地区は、五色山という山があるものの、四方を囲まれているわけではなく、どんな被害があるだろうか?と考えながら会場を目指しました。

 

稲葉たっちゃんの話によると、

今年(2024年度)はイノシシさんの捕獲、県全体で多くなっています。宇土市では例年800頭ほど獲れています。今年はこの松山地区で100頭捕獲したそうです。

 

 

 

獣対策のマップづくり

この日のプログラムは、害獣対策のマップづくりです。

その町や地区の地図を用意し、有害鳥獣を目撃した場所、鳥獣によって被害のあった場所、獣道や足跡など痕跡があった場所、柵を張っていたり罠を仕掛けている場所、放置されている果樹、耕作放棄地などを書き込み、その町の被害状況を可視化するものです。

住民の方がそれぞれに持つ情報を集約し、鳥獣被害に対する共通の理解を持つことができます。また、どこから動物が来ているのか、どこを守っていくといいか予想を立てることで、次の対策に繋げることができるというものです。

 

 

マップづくりに入る前に、皆さんの困りごとや疑問をヒヤリング。

 

Q イノシシは夜行性?
A イノシシは夜行性ではありません。慣れると昼間でも出てくることがあります。

 

Q 朝、よく見るようになった。新幹線の高架下を通って宇土市内の山に帰っていくのを見かける。寝床を決めたらそこから動かないのかな?
A 食べ物次第じゃないか。時期によって変わったりするかと思います。イノシシの脳はウマと同じくらいあると言われているので、しっかり見極めていると思う。

 

 

マップづくり

いざ、マップづくり!

 

 

 

みなさん遠慮がちなのか、シールはなかなか減らず……

 

 

そんなに被害…ない…?

マップを前に皆さんと話して見えてきたのは、耕作放棄地の増加に対する課題感でした。「あそこも畑をやめらした」「ここもか」みたいなことが年々増えているそうです。そこが山から来たイノシシの潜み場にならないように、地域で耕作放棄地の管理・対策に取り組む必要性を話し合いました。

 

さて、イノシシの実際の被害についてですが、
いざマップを作ってみると、そんなに被害が多くて困っている、ということでは……ない……?

という状況が見えてきました。

イノシシを見かけることはあるものの、幸いにも何か被害が出るところまでは至ってないようです。

でも、この上松山地区で100頭は捕獲されています。

ん?と思っていると、そこにはキーパーソンの存在が。

害獣駆除のキーパーソン

この地区に暮らすセキさん、何度も何度も稲葉たっちゃんの話を聞きに来られました。そして鳥獣害対策の仕方を学んでいきました。仲間と2人、狩猟免許を取得し、罠も設置し、熱心に取り組んでいます。くくり罠、箱罠ともに仕掛けています。上に書いた地域での100頭の捕獲は、セキさんとお仲間の功績が大きいようです。

彼がいてくれることがとても大きな抑止力になっているのではないでしょうか。

 

セキさんは何度も何度も何度もたっちゃんの話を聞いて、ドローンの免許もとり、そこから罠を仕掛けました。おかげで効果的に捕獲ができ、地域の人から信頼と感謝の思いが厚いようでした。上松山地区のサイトでは、捕獲したイノシシの様子が紹介されていますのでリンクはこちらです。

https://www.gosikiyama-fureaikai.com/kuusatsu.html

 

ICTやデータを用いて取り組み担ってくれる人がいることで、「地域の困りごと」になる一方の鳥獣害問題が「地域で困らないこと」になるのですね。驚きました。

 

 

被害が大きくないのに、鳥獣被害対策セミナーでこんなに人が集まることにも驚きました。

 

「なんか公民館であるてだけん行ってみようか」というものではなく、害獣対策について知り対策するために集まられました。

これにも理由がありました。

この地域には五色山という山があります。みんな幼い頃に遊んだ、故郷の山です。しかし徐々に荒れ始め、道も通れなくなるほどになってしまいました。5年前に補助金も採択されたことから、みんなで地元の五色山を守ろう、取り戻そうと立ち上がり、樹を伐採したり道を整備したりしてみんなで手を取り合ってきました。その頃からイノシシが出始め、自分たちで駆除しよう、守ろうと、自分たちのやり方で鳥獣対策をしてきたそうです。その動きがあったから、地域内の信頼関係や協力体制が自然と築かれていたのではないかとセキさんが話してくれました。

 

「こうして勢力的にがんばる人がいるからこそ、その人たちだけに任せずにできるところから協力していくといいですね」とたっちゃんからメッセージをお届けして終わりました。

 

マップで見える課題、次の地域はどこでしょう?

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2025.03.26

若手が中心で金網柵設置

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年3月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

金網柵を張ろう!

熊本県北の地域のそこは四方を山に囲まれていて、動物たちの暮らす中に集落があるようなところでした。そこで住民の方を中心に、行政の方・柵メーカーの方・そして稲葉たっちゃんで金網柵を設置しました。

 

 

山ぎわは、柵の管理や草刈りがしやすいように竹を切って広げます。最初のこの手間が重要です。

 

 

 

 

若手中心の鳥獣対策

4ヶ月前にこの地域でセミナーをし、それから戸馳島にも視察に来られ、3度目のこの日が金網柵の設置でした。金網柵で守りたいのは田んぼと柚子の樹。

この田んぼは5年前からイノシシさんに好まれるようになりましたが、昨年は被害が特にひどく、「もうどうでもいいか……」という気持ちになってしまったと地主の方は話されました。この地域で守るべき畑はたくさんあり、その一歩目としてここに柵を設置することになったのでした。この地域で金網柵を導入するのはこの日が初めてです。選定の理由は、ここが通り道からも見えて、守れているか(動物が侵入していないか)みんなで確認・検証がしやすいということでモニタリングの要素もあるようでした。

 

住民の方にお会いして最初の印象は、「平均年齢が低い!!」ということ。わたしは鳥獣対策に参加するのが60代だと若い印象を持つのですが、この地域は30代がメインで最年長のリーダーが64歳。このグループで竹チップを販売したり、ドローンで農地に消毒薬を撒いたりと、それまでも若手中心のみなさんがいろんなことに取り組んできました。

メンバーが若いのでみなさんご家族の用事があり土日に集合するのが難しく、柵設置は平日に開催となりました。

 

柵メーカーさんが来てくれるのは強い味方!仕様書に書かれていないようなコツも教えてくれます。

 

 

 

 

 

扉設置部隊。軽トラも行き来できる扉がつけられるところも金網柵の利点です。最初は手間がかかりますが、最初にがんばればその後の動きや管理などのストレスが少なく済むのが金網柵です。

 

地域にはまだシカによる被害は見られませんが、声は毎日のように聞こえているそうで、そのうち被害に繋がっていかないようシカにも対応できる背の高い柵を設置しました。

 

支柱設置部隊。力がいりますがみんなで協力!「若くないとしんどい!」だそうです。笑

 

 

 

セミナーから4ヶ月、5人が狩猟免許取得

たっちゃんが大きな声で「この地域はすごい!うらやましい!!」と言いました。何が羨ましいかというと…

平均年齢の低さもありますが、団結力が備わっていること、動きが早いこと、実行する力があること ではないかと話を聞いて思いました。

 

 

5年前、地域に鳥獣被害が出るようになってから、地域の若手が中心となって話し合いと対策を重ねてきました。そのなかで、イノシシを捕獲し、止め刺しし、肥料にして活用しよう、少しずつ実現していきたいねと地域の中で話していたところ、2024年の10月にたっちゃんのセミナーを行うこととなり、それからすぐに5人が狩猟免許を取得しました。

 

この地域の農家の方は、みんな罠を持っています。それでも被害が止まらないので今後は堆肥化マシーンの導入も考えているようです。

若いことに加え、以前から協力し合ってきた取り組みがあるので、課題意識の共有から対策、実行までの流れが比較的スムーズかもしれません。「とにかくみんな好きなことを言う」と最年長のナカミツさんが言いました。それが良い空気をつくっているんだろう、と。風通しの良さは、作業の中からも見えました。

作業中、通りかかったおばちゃんが「知っとったら手伝いに来たとに〜」と声をかけにきてくれるなど、地域の方のあたたかい繋がりがある場でした。

 

たっちゃんがいつもセミナーで話す、地域での鳥獣対策の最初の一歩として

◆『「イノシシのことは◯◯の仕事」と、誰かだけが従事することのないよう、地域で取り組んでほしい』

◆ 若手が一人でもいるのが望ましい

この2点があります。そのどちらもここは最初から揃っています。

 

 

行政の方も一緒に、というか率先して汗を流す姿もまた印象的でした。

 

鳥獣対策だけでなく、地域の力のあるこの集落、ここからどうなっていくでしょう!楽しみです。

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2025.03.11

3年の集大成!イノシシ粉マシーン導入のため休眠預金を活用

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!

2025年3月彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

休眠預金活用事業というのをご存知ですか?

銀行でなが〜く眠る預金を社会課題の解決のために活用するものです。例えば口座の持ち主が亡くなり、相続手続きなどされないままになっていたり、あまり入っていないからとそのまま忘れていたり。そんなお金は国単位で見ればかなりの額になります。ただ眠らせておくのではなく、資金として社会にとって必要な事業に活用していこうと始まったものです。(ちゃんとお金は引き出せますのでご安心くださいね)
わたしの遠い記憶にもありますが、確か残高は数十円・・・口座を解約するには印鑑の変更や住所変更の手続き、通帳紛失届など諸々しなきゃいけないことを思えば、そのままにしておきたい(笑)。こうして活用していただけるなら胸を張って放置しておこうと思います。

 

さて、農家ハンター(株式会社イノP)は、その休眠預金を活用することが認められ資金分配団体である『一般社団法人SINKa』さんより、3年間の伴走支援を受けてきました。1週間に一度、メンターさんとメンバーでミーティングをするという時点で、伴走の本気度が窺えます。農家ハンターだけでなくSINKaさん側も大変な3年間だったろうと思います。

その集大成として、
ソーシャルビジネス次世代フォーラム~九州の若者による地域価値創造事業の輪を広げよう~休眠預金等活用制度に基づく2021年度事業「SB第3世代による九州位置(地域)価値創造事業」成果報告会 が開催されました。

 

SINKa代表の濱砂さん

 

同じようにSINKaさんから支援を受けている他の4つの団体の報告と座談会に、これから活用していきたいと考えている企業・団体などがリアルとオンラインで参加しました。

 

3年間で行ったこと①イノシシ粉末化マシーン大型化!

報告のトップバッターはイノP!楠田さんが登壇しました。

 

この休眠預金を活用して行ったことは、イノシシさんをまるごとパウダーに変えちゃうイノ粉マシーンの導入と設置です。これまでプロトタイプをジビエファームに置いていただいていましたが、より多くの頭数を一度に処理できるよう大きいサイズを導入、場所もこれまで置いていた場所から変更しました。

 

なぜ大型化する必要があったかというと捕獲数が増えたこと。

捕獲したイノシシさんをジビエとして利用できるものはごく一部で、手間と人手を要します。ジビエに向かない個体や、解体して肉にならない部分を焼却するのにもコストがかかります。

かといって、処理の仕方として主流となっている埋設は多大な労力が必要で、捕獲数が多い場合は不向きです。

ということで、イノシシさん投入から5時間でパウダーになり畑に撒いて活用できるイノ粉マシーン を大型化することが望ましかったのです。

 

もう一つ、メンタル面の理由もあります。捕獲のための罠を設置する農家さんの多くは、できることなら命を奪いたくないとお考えです。せめてその命が何らかの形で使われてほしいという思いでした。埋設と粉末にして畑で使うのはどちらが精神的負担が軽いかアンケートをとったところ、粉末にして畑で利用したいという声が9割を占めました。

 

1月についに導入に至り、運用がスタートしたばかりです。

 

3年間で行ったこと②人材確保

楠田さん、頭のきれる方なんですが、ユーモアセンスも抜群です。

「人件費に充てられる補助金はあまり多くありませんが、今回はそれができたので人材を確保できました。それがわたしです」

この流れに笑いと拍手が起こりました。そうそう、そうなんです。

 

そしてそんな楠田さんの功績の一つに 鳥獣対策スタンプラリー があります。
仕掛けを楽しみながら鳥獣対策に取り組めるものです。チェックリストも作成していましたので、「誰もが気軽に鳥獣対策の第一歩を踏み出せる」仕組みが整ってきているように思います。

 

3年間で行ったこと③セミナーや視察の受け入れ

講演やセミナーに参加されたのは3年で2200人、農家ハンター、イノPの拠点である三角町の戸馳島に来られたのは439人(以上)!

その中から、この農家ハンターがやってきたモデルの中から取り組みたいという声が多数挙がっているそうです。

 

さらに、IcTを活用してきた、データも役立つ道筋が見えてきたと話がありました。7年間の活動の基礎やデータが、これから分析や他地域に生かされていくでしょう。データがあり、それを周りに伝えているからこそモデルとして広がっていくということですね。

 

失敗は失敗にあらず

「包み隠さない」のが農家ハンタースタイル。失敗もオープンにすることで、同じ志を持った人が同じミスをしなくていいように。

イノシシ粉末化マシーンの設置場所の選定、必要な手続きなどが煩雑で想定よりも時間がかかったと報告の中で話されました。もともと予定していた土地近くの住民の方から設置に不安の声があがり変更することにしました。が、その土地はもともと農地だったため農地からの転用手続きが必要でした。その手続きはタイミングが限られているため、手続きに1年かかりました。さらにその手続きの中で、機械設置に関してさまざまな確認事項が発生し、それをクリアするのにまた1年ほどかかったというわけです。

 

ソーシャルビジネスは、地域課題・社会課題の解決にビジネスで挑むことなので前例のないことも多く、一歩一歩道を拓くパイオニアのようなものだとわたしは捉えています。思わぬ事態に直面して、その都度一つひとつクリアしていっています。失敗にも見えるそんなことも、次に同じ道を歩む人にとってはどんな手続きが必要で注意していかなければならないかを示す教科書になります。

メンターの大堂さんからは、

「鳥獣対策は誰がやるかという問題があり、国も県も農家の方も、みんな正解がわからないところだけど、こうして代表の宮川さん、現場の稲葉さん、農水省から来た楠田さん、他雨や解体をする井上さんがいて、全国に発信し、良いチームで取り組んでいる」とコメントがありました。

 

 

他にも、与論島で活動する一般社団法人E-Yoronさん、福岡県大牟田市で活動する大牟田ビンテージのまち株式会社さん、対馬で活動する一般社団法人MITさん、同じ熊本の菊池市で活動する株式会社フリップザミントさんの報告がありました。3年でそれぞれの結果を出しておられます。課題に取り組むだけでなく、それを足がかりにさらに成長されるお姿に脱帽の思いでした。ビジネスを成り立たせるだけでも簡単ではないですが、描く図によって地域課題の解決が想像以上の展開につながっていくことも、3年という長いスパンで実行するものだったからこそ見えるものではないかと思います。

また、「休眠預金は、他の補助金や助成金とは違い、おばあちゃんたちが貯めたお金だったりします。使うのも大切にそのことを感じながら使わせていただく気持ちで」と次世代の方へのメッセージとも言える言葉もありました。だからこそ、社会にとって、地域にとってプラスとなることに使うということなんですね。

 

 

トークセッションでも、宮川さんと稲葉たっちゃんは仲良し、良いコンビです。

 

 

最後に、この休眠預金事業を活用して導入したNEWバージョンのイノ粉マシーンがこちらです!

 

鳥獣害対策に取り組みたい人にとって大きな壁である「捕獲のその後」の一つ、”処理”をスムーズにすることができます。ここをチャレンジセンターとして活用していくことになります。

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