活動ブログ

BLOG

2025.03.31

【熊本県宇土市上松山地区】害獣対策マップづくり

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年3月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

宇土市の上松山地区にお邪魔してきました。この日、宇土市の農林水産課主催で鳥獣害被害対策のためのセミナーが行われ、地域の方14人が集まりました。

 

《今回のレポートのポイント》

・宇土市上松山地区の鳥獣害被害状況
・害獣対策のためのマップづくりについて
・マップから見えた宇土市上松山地区の害獣対策状況と課題


宇土市上松山地区のイノシシ出没状況

国道3号線から入ってすぐのこの地区は、五色山という山があるものの、四方を囲まれているわけではなく、どんな被害があるだろうか?と考えながら会場を目指しました。

 

稲葉たっちゃんの話によると、

今年(2024年度)はイノシシさんの捕獲、県全体で多くなっています。宇土市では例年800頭ほど獲れています。今年はこの松山地区で100頭捕獲したそうです。

 

 

 

獣対策のマップづくり

この日のプログラムは、害獣対策のマップづくりです。

その町や地区の地図を用意し、有害鳥獣を目撃した場所、鳥獣によって被害のあった場所、獣道や足跡など痕跡があった場所、柵を張っていたり罠を仕掛けている場所、放置されている果樹、耕作放棄地などを書き込み、その町の被害状況を可視化するものです。

住民の方がそれぞれに持つ情報を集約し、鳥獣被害に対する共通の理解を持つことができます。また、どこから動物が来ているのか、どこを守っていくといいか予想を立てることで、次の対策に繋げることができるというものです。

 

 

マップづくりに入る前に、皆さんの困りごとや疑問をヒヤリング。

 

Q イノシシは夜行性?
A イノシシは夜行性ではありません。慣れると昼間でも出てくることがあります。

 

Q 朝、よく見るようになった。新幹線の高架下を通って宇土市内の山に帰っていくのを見かける。寝床を決めたらそこから動かないのかな?
A 食べ物次第じゃないか。時期によって変わったりするかと思います。イノシシの脳はウマと同じくらいあると言われているので、しっかり見極めていると思う。

 

 

マップづくり

いざ、マップづくり!

 

 

 

みなさん遠慮がちなのか、シールはなかなか減らず……

 

 

そんなに被害…ない…?

マップを前に皆さんと話して見えてきたのは、耕作放棄地の増加に対する課題感でした。「あそこも畑をやめらした」「ここもか」みたいなことが年々増えているそうです。そこが山から来たイノシシの潜み場にならないように、地域で耕作放棄地の管理・対策に取り組む必要性を話し合いました。

 

さて、イノシシの実際の被害についてですが、
いざマップを作ってみると、そんなに被害が多くて困っている、ということでは……ない……?

という状況が見えてきました。

イノシシを見かけることはあるものの、幸いにも何か被害が出るところまでは至ってないようです。

でも、この上松山地区で100頭は捕獲されています。

ん?と思っていると、そこにはキーパーソンの存在が。

害獣駆除のキーパーソン

この地区に暮らすセキさん、何度も何度も稲葉たっちゃんの話を聞きに来られました。そして鳥獣害対策の仕方を学んでいきました。仲間と2人、狩猟免許を取得し、罠も設置し、熱心に取り組んでいます。くくり罠、箱罠ともに仕掛けています。上に書いた地域での100頭の捕獲は、セキさんとお仲間の功績が大きいようです。

彼がいてくれることがとても大きな抑止力になっているのではないでしょうか。

 

セキさんは何度も何度も何度もたっちゃんの話を聞いて、ドローンの免許もとり、そこから罠を仕掛けました。おかげで効果的に捕獲ができ、地域の人から信頼と感謝の思いが厚いようでした。上松山地区のサイトでは、捕獲したイノシシの様子が紹介されていますのでリンクはこちらです。

https://www.gosikiyama-fureaikai.com/kuusatsu.html

 

ICTやデータを用いて取り組み担ってくれる人がいることで、「地域の困りごと」になる一方の鳥獣害問題が「地域で困らないこと」になるのですね。驚きました。

 

 

被害が大きくないのに、鳥獣被害対策セミナーでこんなに人が集まることにも驚きました。

 

「なんか公民館であるてだけん行ってみようか」というものではなく、害獣対策について知り対策するために集まられました。

これにも理由がありました。

この地域には五色山という山があります。みんな幼い頃に遊んだ、故郷の山です。しかし徐々に荒れ始め、道も通れなくなるほどになってしまいました。5年前に補助金も採択されたことから、みんなで地元の五色山を守ろう、取り戻そうと立ち上がり、樹を伐採したり道を整備したりしてみんなで手を取り合ってきました。その頃からイノシシが出始め、自分たちで駆除しよう、守ろうと、自分たちのやり方で鳥獣対策をしてきたそうです。その動きがあったから、地域内の信頼関係や協力体制が自然と築かれていたのではないかとセキさんが話してくれました。

 

「こうして勢力的にがんばる人がいるからこそ、その人たちだけに任せずにできるところから協力していくといいですね」とたっちゃんからメッセージをお届けして終わりました。

 

マップで見える課題、次の地域はどこでしょう?

この記事をシェアする

2025.03.26

若手が中心で金網柵設置

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!2025年3月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

金網柵を張ろう!

熊本県北の地域のそこは四方を山に囲まれていて、動物たちの暮らす中に集落があるようなところでした。そこで住民の方を中心に、行政の方・柵メーカーの方・そして稲葉たっちゃんで金網柵を設置しました。

 

 

山ぎわは、柵の管理や草刈りがしやすいように竹を切って広げます。最初のこの手間が重要です。

 

 

 

 

若手中心の鳥獣対策

4ヶ月前にこの地域でセミナーをし、それから戸馳島にも視察に来られ、3度目のこの日が金網柵の設置でした。金網柵で守りたいのは田んぼと柚子の樹。

この田んぼは5年前からイノシシさんに好まれるようになりましたが、昨年は被害が特にひどく、「もうどうでもいいか……」という気持ちになってしまったと地主の方は話されました。この地域で守るべき畑はたくさんあり、その一歩目としてここに柵を設置することになったのでした。この地域で金網柵を導入するのはこの日が初めてです。選定の理由は、ここが通り道からも見えて、守れているか(動物が侵入していないか)みんなで確認・検証がしやすいということでモニタリングの要素もあるようでした。

 

住民の方にお会いして最初の印象は、「平均年齢が低い!!」ということ。わたしは鳥獣対策に参加するのが60代だと若い印象を持つのですが、この地域は30代がメインで最年長のリーダーが64歳。このグループで竹チップを販売したり、ドローンで農地に消毒薬を撒いたりと、それまでも若手中心のみなさんがいろんなことに取り組んできました。

メンバーが若いのでみなさんご家族の用事があり土日に集合するのが難しく、柵設置は平日に開催となりました。

 

柵メーカーさんが来てくれるのは強い味方!仕様書に書かれていないようなコツも教えてくれます。

 

 

 

 

 

扉設置部隊。軽トラも行き来できる扉がつけられるところも金網柵の利点です。最初は手間がかかりますが、最初にがんばればその後の動きや管理などのストレスが少なく済むのが金網柵です。

 

地域にはまだシカによる被害は見られませんが、声は毎日のように聞こえているそうで、そのうち被害に繋がっていかないようシカにも対応できる背の高い柵を設置しました。

 

支柱設置部隊。力がいりますがみんなで協力!「若くないとしんどい!」だそうです。笑

 

 

 

セミナーから4ヶ月、5人が狩猟免許取得

たっちゃんが大きな声で「この地域はすごい!うらやましい!!」と言いました。何が羨ましいかというと…

平均年齢の低さもありますが、団結力が備わっていること、動きが早いこと、実行する力があること ではないかと話を聞いて思いました。

 

 

5年前、地域に鳥獣被害が出るようになってから、地域の若手が中心となって話し合いと対策を重ねてきました。そのなかで、イノシシを捕獲し、止め刺しし、肥料にして活用しよう、少しずつ実現していきたいねと地域の中で話していたところ、2024年の10月にたっちゃんのセミナーを行うこととなり、それからすぐに5人が狩猟免許を取得しました。

 

この地域の農家の方は、みんな罠を持っています。それでも被害が止まらないので今後は堆肥化マシーンの導入も考えているようです。

若いことに加え、以前から協力し合ってきた取り組みがあるので、課題意識の共有から対策、実行までの流れが比較的スムーズかもしれません。「とにかくみんな好きなことを言う」と最年長のナカミツさんが言いました。それが良い空気をつくっているんだろう、と。風通しの良さは、作業の中からも見えました。

作業中、通りかかったおばちゃんが「知っとったら手伝いに来たとに〜」と声をかけにきてくれるなど、地域の方のあたたかい繋がりがある場でした。

 

たっちゃんがいつもセミナーで話す、地域での鳥獣対策の最初の一歩として

◆『「イノシシのことは◯◯の仕事」と、誰かだけが従事することのないよう、地域で取り組んでほしい』

◆ 若手が一人でもいるのが望ましい

この2点があります。そのどちらもここは最初から揃っています。

 

 

行政の方も一緒に、というか率先して汗を流す姿もまた印象的でした。

 

鳥獣対策だけでなく、地域の力のあるこの集落、ここからどうなっていくでしょう!楽しみです。

この記事をシェアする

2025.03.11

3年の集大成!イノシシ粉マシーン導入のため休眠預金を活用

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!

2025年3月彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

休眠預金活用事業というのをご存知ですか?

銀行でなが〜く眠る預金を社会課題の解決のために活用するものです。例えば口座の持ち主が亡くなり、相続手続きなどされないままになっていたり、あまり入っていないからとそのまま忘れていたり。そんなお金は国単位で見ればかなりの額になります。ただ眠らせておくのではなく、資金として社会にとって必要な事業に活用していこうと始まったものです。(ちゃんとお金は引き出せますのでご安心くださいね)
わたしの遠い記憶にもありますが、確か残高は数十円・・・口座を解約するには印鑑の変更や住所変更の手続き、通帳紛失届など諸々しなきゃいけないことを思えば、そのままにしておきたい(笑)。こうして活用していただけるなら胸を張って放置しておこうと思います。

 

さて、農家ハンター(株式会社イノP)は、その休眠預金を活用することが認められ資金分配団体である『一般社団法人SINKa』さんより、3年間の伴走支援を受けてきました。1週間に一度、メンターさんとメンバーでミーティングをするという時点で、伴走の本気度が窺えます。農家ハンターだけでなくSINKaさん側も大変な3年間だったろうと思います。

その集大成として、
ソーシャルビジネス次世代フォーラム~九州の若者による地域価値創造事業の輪を広げよう~休眠預金等活用制度に基づく2021年度事業「SB第3世代による九州位置(地域)価値創造事業」成果報告会 が開催されました。

 

SINKa代表の濱砂さん

 

同じようにSINKaさんから支援を受けている他の4つの団体の報告と座談会に、これから活用していきたいと考えている企業・団体などがリアルとオンラインで参加しました。

 

3年間で行ったこと①イノシシ粉末化マシーン大型化!

報告のトップバッターはイノP!楠田さんが登壇しました。

 

この休眠預金を活用して行ったことは、イノシシさんをまるごとパウダーに変えちゃうイノ粉マシーンの導入と設置です。これまでプロトタイプをジビエファームに置いていただいていましたが、より多くの頭数を一度に処理できるよう大きいサイズを導入、場所もこれまで置いていた場所から変更しました。

 

なぜ大型化する必要があったかというと捕獲数が増えたこと。

捕獲したイノシシさんをジビエとして利用できるものはごく一部で、手間と人手を要します。ジビエに向かない個体や、解体して肉にならない部分を焼却するのにもコストがかかります。

かといって、処理の仕方として主流となっている埋設は多大な労力が必要で、捕獲数が多い場合は不向きです。

ということで、イノシシさん投入から5時間でパウダーになり畑に撒いて活用できるイノ粉マシーン を大型化することが望ましかったのです。

 

もう一つ、メンタル面の理由もあります。捕獲のための罠を設置する農家さんの多くは、できることなら命を奪いたくないとお考えです。せめてその命が何らかの形で使われてほしいという思いでした。埋設と粉末にして畑で使うのはどちらが精神的負担が軽いかアンケートをとったところ、粉末にして畑で利用したいという声が9割を占めました。

 

1月についに導入に至り、運用がスタートしたばかりです。

 

3年間で行ったこと②人材確保

楠田さん、頭のきれる方なんですが、ユーモアセンスも抜群です。

「人件費に充てられる補助金はあまり多くありませんが、今回はそれができたので人材を確保できました。それがわたしです」

この流れに笑いと拍手が起こりました。そうそう、そうなんです。

 

そしてそんな楠田さんの功績の一つに 鳥獣対策スタンプラリー があります。
仕掛けを楽しみながら鳥獣対策に取り組めるものです。チェックリストも作成していましたので、「誰もが気軽に鳥獣対策の第一歩を踏み出せる」仕組みが整ってきているように思います。

 

3年間で行ったこと③セミナーや視察の受け入れ

講演やセミナーに参加されたのは3年で2200人、農家ハンター、イノPの拠点である三角町の戸馳島に来られたのは439人(以上)!

その中から、この農家ハンターがやってきたモデルの中から取り組みたいという声が多数挙がっているそうです。

 

さらに、IcTを活用してきた、データも役立つ道筋が見えてきたと話がありました。7年間の活動の基礎やデータが、これから分析や他地域に生かされていくでしょう。データがあり、それを周りに伝えているからこそモデルとして広がっていくということですね。

 

失敗は失敗にあらず

「包み隠さない」のが農家ハンタースタイル。失敗もオープンにすることで、同じ志を持った人が同じミスをしなくていいように。

イノシシ粉末化マシーンの設置場所の選定、必要な手続きなどが煩雑で想定よりも時間がかかったと報告の中で話されました。もともと予定していた土地近くの住民の方から設置に不安の声があがり変更することにしました。が、その土地はもともと農地だったため農地からの転用手続きが必要でした。その手続きはタイミングが限られているため、手続きに1年かかりました。さらにその手続きの中で、機械設置に関してさまざまな確認事項が発生し、それをクリアするのにまた1年ほどかかったというわけです。

 

ソーシャルビジネスは、地域課題・社会課題の解決にビジネスで挑むことなので前例のないことも多く、一歩一歩道を拓くパイオニアのようなものだとわたしは捉えています。思わぬ事態に直面して、その都度一つひとつクリアしていっています。失敗にも見えるそんなことも、次に同じ道を歩む人にとってはどんな手続きが必要で注意していかなければならないかを示す教科書になります。

メンターの大堂さんからは、

「鳥獣対策は誰がやるかという問題があり、国も県も農家の方も、みんな正解がわからないところだけど、こうして代表の宮川さん、現場の稲葉さん、農水省から来た楠田さん、他雨や解体をする井上さんがいて、全国に発信し、良いチームで取り組んでいる」とコメントがありました。

 

 

他にも、与論島で活動する一般社団法人E-Yoronさん、福岡県大牟田市で活動する大牟田ビンテージのまち株式会社さん、対馬で活動する一般社団法人MITさん、同じ熊本の菊池市で活動する株式会社フリップザミントさんの報告がありました。3年でそれぞれの結果を出しておられます。課題に取り組むだけでなく、それを足がかりにさらに成長されるお姿に脱帽の思いでした。ビジネスを成り立たせるだけでも簡単ではないですが、描く図によって地域課題の解決が想像以上の展開につながっていくことも、3年という長いスパンで実行するものだったからこそ見えるものではないかと思います。

また、「休眠預金は、他の補助金や助成金とは違い、おばあちゃんたちが貯めたお金だったりします。使うのも大切にそのことを感じながら使わせていただく気持ちで」と次世代の方へのメッセージとも言える言葉もありました。だからこそ、社会にとって、地域にとってプラスとなることに使うということなんですね。

 

 

トークセッションでも、宮川さんと稲葉たっちゃんは仲良し、良いコンビです。

 

 

最後に、この休眠預金事業を活用して導入したNEWバージョンのイノ粉マシーンがこちらです!

 

鳥獣害対策に取り組みたい人にとって大きな壁である「捕獲のその後」の一つ、”処理”をスムーズにすることができます。ここをチャレンジセンターとして活用していくことになります。

この記事をシェアする

2025.02.21

マップづくりは”みんなで鳥獣対策しよう”の第一歩!阿蘇市山田地区にて

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年2月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

阿蘇市山田地区 効果的な柵の張り方

阿蘇市の山田地区で鳥獣被害対策のマップづくりが行われました。

の前に、みなさん外の集まっておられたので柵の講習を。

実際の現場で、金網柵はこの土地のどこに張ればいいのか?質問を交えながら説明しました。

 

 

 

 

畑のすぐ横がコンクリートだったら、電気柵はコンクリートぎりぎりに張る?それとも少しコンクリートから距離をとる?

 

電気柵に関していえば、じつはコンクリートの上にイノシシさんの足がある状態で鼻が電気柵に当たっても、あまり痛さは感じません。土の上に足があるほうが通電しますので効果があります。なので、コンクリート部分から少し距離を空けて電気柵を張るのが◎となります。

 

それでもコンクリートがすぐそばに張らなければならないときは防草シートに電線が編み込まれた通電シートを活用するなど、場所場所によって選んでいければ最小限のコストで効果を上げていけるかもしれません。

効率よく効果を高めるためには知識が必要です。時には、今までやっていたことから変更したほうがいい場合もあります。「この場合はどうだろう?」と考えながら、どこにどんな柵をするかを決めていけるといいですね。

 

 

また、管理のしやすさも重要です。管理のしやすさは効果に通ずる!ということで、”鳥獣対策ありきの管理しやすい畑づくり” にシフトしていくことが必要になってくるでしょう。

 

 

 

・一昨年まではイノシシは出てこなかったけど今は昼間も堂々を歩いている

・家庭菜園も荒らされるからもう作らない。

・電気を流しておかないと、電線が切れるようになる。

 

こんな声が聞かれました。

 

 

 

マップづくりは鳥獣被害対策に強い地域づくり

さて、この日メインのプログラムはマップづくりです。

これまでブログでも何度かご紹介してきた、鳥獣被害対策マップづくり。

その地域でどこに動物が出て被害が出ているか、対策はどうかを地図に落とし込んでいきます。

 

 

 

 

鹿、イノシシ、小動物、どんな動物がどこから来ているか想像できます。対して対策はどこでどうしているか地図に記すことで現場を俯瞰してみることができるようになるというものです。また、対策をどうするかを集落全体で考えていくことができるのです。

そしてさらにプライスレスな成果が、「集落みんなで共通の理解を意識を持てる」ということ。鳥獣対策は一人が万全にやっていても、動物は隣の畑に行くだけなので集落での効果にはつながりません。一人でやれることではなく協力して取り組むことですから、みんなで「うちの地区はこんな感じなんだね」と理解できれば次の一歩にもつながりやすいもの。

 

 

お昼ご飯にしし汁とおにぎり、ぜんざいが振る舞われました!お願いしたのはまるかけキッチンの橋田さんと橋本さん。前日から仕込んでつくってくれました。地区の女性陣もおいしいおにぎりを作ってくれました。

 

 

 

 

 

おいしいものが真ん中にあると心の距離が縮まります♪

 

たっちゃんは、美味しいものをみんなで前にして、「やることはたくさんあって、対策までするのは大変。鳥獣対策はマイナスのように感じるけど、イノシシや鹿を通じてわいわいやることをプラスの捉えて取り組んでもらえたら」と話しました。

 

 

「地域で鳥獣対策しよう!」と英断した区長さん(前の区長さんも)。その昔、イノシシをヘッドロックで捕まえたそうです。

 

あ市長さんも顔を出されました。

 

今回、たくさんの声を聞くことができました。ご紹介します。

・自分たちのところが動物から守れたら、次は別の地域に行くのではないか。町全体、県全体、国全体で対策しないといけないのではないか。

・今は農作物の心配だけど自分は人的被害が出るのを一番危惧している。

・Google Mapとの連携で、ITを使って対策できそう

・守ってばかりではラチがあかないのではないか。特に鹿は獲っていくことも考えないと。

 

熊本県及び阿蘇市の行政の職員さん

・阿蘇市全体に声をかけて、手を挙げたのが山田地区。ここがモデル地区になれば他地区も動くかもしれない。みんなで気持ち一つにやっていきましょう

・みんなで勉強して柵を張らないと効果がうすい。張って終わりにならないようやっていきましょう

・市から「ああしてくれ」「こうしてくれ」とは言えない。だけど「こうしたい」ということにはサポートができるのでどんどん声を挙げてほしい。

 

 

捕獲についての話では、「守りを固めていくと、次は母数を減らすために獲るということになっていきます」と楠田さん。これも地域で取り組むことです。捕獲で一番大変なのは止め刺しとその後の処理です。ジビエコンソーシアムが止め刺しの講習会をやっています。熊本は対策のための罠の講習やなどが充実しているそうです。

 

山田地区100世帯ほどあるそうですが、うち20世帯がおいでになりました。すごい!

 

稲葉たっちゃんと楠田さんは今回の講習に手応えを感じたようでした。マップづくりに至るまでがなかなか難しいことを他の地域で感じています。マップづくりは一人ですることではないですから、これは地域で課題意識を持てていることの表れです。また、住民の方の声にあったように、自分たちの町を守れたらそれでいいということではなく「みんなですること」という意識もまた日本各地で抱えるこの課題に挑むための鍵でもあります。

この記事をシェアする

2025.02.07

現場のリアル・捕獲から運び出しまで

農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
2025年2月、彼らの現場で見て感じた事をレポートさせていただきます。

 

 

大イノシシがかかった

 

「大イノシシが罠にかかった」

 

そう言って、稲葉たっちゃんと楠田さんは山に向かいました。

 

現場はこれまでにもイノシシさんを何度も捕獲してきた箱罠で、わたしも数回行ったことがありました。

通常、捕えられたイノシシさんは人間が近づくとそわそわと動き出したり、突進してきたり、時に威嚇の声をあげます。恐怖や脅威を感じて興奮状態に入ります。そのため、不用意に近づいてストレスを感じさせることのないように注意を払います。このときも距離を取り、隠れながら様子を伺っていました。

 

 

たっちゃんは、止め刺し(命を止めること)の方法として、空気銃を選びました。イノシシさんにも人にもストレスが少なく、またジビエにするのにも向いているからです。

 

わたしは空気銃で仕留める様子を見るのは初めてで少し緊張していました。

 

パスっと音が聞こえて、「おっ」とのぞいたけれど、倒れる音は聞こえない。暴れる様子もない。

 

それからもう一度。

それでも何も変化がありません。

 

空気銃が効かない

 

当たってないのかな?と思ったけれどそうではありませんでした。少し流血しているようだけど、様子は変わりません。

もう少し近づいてみることにしましたが、人間の姿が近くに来てもその大イノシシは何とも動じない。

 

気にもしていないような様子に驚きました。

結局、3発打ちましたが、空気銃よりもイノシシさんが強かったのです。

 

そこからは電気止め刺しに切り替えました。そのときも動き回り始めたのは終盤になってから。

どうしてこんなにも落ち着いていたのでしょう。

 

「自分の方が強いという自信があるから」

とたっちゃんが教えてくれました。

 

確かに、ボスの貫禄みたいなものがものすごくありました。もしも丸腰で戦えば、たっちゃんは良い試合をするかもしれませんが、わたしは間違いなく勝てません。それがわかっているから、精神的にも落ち着いているのだそうです。時々こんなイノシシさんがいるようです。

「大物はジタバタしない」というのは、人間の世界だけでなく動物の世界でも共通なんですね。

 

 

箱罠を補強するぐるぐるの極太ワイヤーも歯の力で引き抜いていました。

 

 

止め刺し、運び出し、運搬

息絶えたように見えても、確実にそうだと分かるまでは手を出すことはしません。力を振り絞って攻撃されることが実際にあるからです。特にこんなに生命力の強い相手だと、細心の注意が必要です。

 

 

運び出しも一苦労。なにせ重い。井上くん作の運び出し便利グッズは持ち合わせていなかったので、たっちゃんと楠田さん2人がかりで引っ張ります。手も痛くなる。

 

 

道路まで出て、ふうと一息。

軽トラまで到着したら今度は引っ張り上げねばなりません。

 

100kg超えているのではないかというほどの大きさですので簡単ではありません。これも二人がかりでどうにか。

 

 

こうして軽トラに載せて、ジビエファームに連れて行くのです。

 

 

これが、捕獲から運び出しまでのリアルです。
一人でやるのは大変。だから、地域の中で「これは◯◯さんの仕事」とせず、みんなで取り組むことが重要だとたっちゃんはいつも実体験をもって話をします。

自分に置き換えてみても、わたしも力がないので何かしたくてもできる自信はありません。精神的にも大きな負担になるし、運び出しもできない。一人なら「できないからやらない、やれない」となるけど、誰かと一緒なら「やれるかもしれない」「この部分ならできる」となっていくのだろうと思います。

 

 

捕獲した動物のその後

 

捕獲した動物は、その場に放置してはいけません。鳥獣保護管理法という法律で定められており、こうやって運び出すか埋設することになっています。

が、埋設も大変。穴掘りだけで時間も体力も使ってしまいます。でもこのように運び出しも楽ではありません。だから、ダメなんだけど、埋設までせずにざっと土をかけるだけで終わってしまう人も多いのだそうです。

 

全てのイノシシさんがジビエに向くわけではないし、販売はシーズンによって捕獲量も質も変わるためなかなか厳しいのが現実です。手間も大きいですし自分たちで食べるのでなく商品にするなばら施設も整えなければなりません。人手もいります。だけど埋めるだけというのは……

そこで活躍するのが、イノシシさんをまるっと投入してパウダーにするマシーンが活躍します。(楠田さんがイノ粉マシーンと呼んでいたような。。。)農家ハンターのマシーンは休眠預金の補助を受け、大きなサイズにチェンジしました。場所もジビエファームから移動。さらに本格的に稼働が進みます。

 

この日は試運転でした。極寒の中、マシーンからBBQの匂いがしてきて「美味しそうなにおい。。。」とみんなで呟きながら運転を見守りました。

 

 

以上、いつもとは少し違う現場レポートでした。

 

この記事をシェアする

カテゴリー
アーカイブ