農家ハンター応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
7月18日、熊本市動植物園でとても興味深い取り組みが行われました。
それは、「屠体給餌」!!
農家ハンターで捕れたイノシシさんが、動物園のライオンやユキヒョウのご飯になりました。
そこで見たこと感じたことをレポートさせていただきます。
普段、お肉の塊を食べている動物園の肉食動物。
そんなところにいきなり野生動物の匂いぷんぷん、
「肉」ではなく「動物」であるイノシシさんがいたら…
ユキヒョウやライオンの様子はどうだったでしょうか!?
ドキドキして見守りました。
屠体給餌とは
改めまして、屠体給餌について。
「とたいきゅうじ」と読みます。
肉食動物の餌として「肉」ではなく「動物」を与えることです。
必ずしも、ではありませんが、
イノシシさんや鹿のように、増えすぎて駆除される野生動物を活用する側面もあります。
この日、親子で聞くセミナーがあり、宮川代表もお話ししました。
ここで私が学んだのはこんなこと↓
本来は狩をする肉食動物たちにとっての「動物福祉」という観点から生まれたもの。
動物園で生まれ育っていても
動物によって望ましい環境・食事・食事方法があり、
本来の環境・状況に近いほど満足度が高まりストレスが軽減されます。
そのため動物園のスタッフのみなさんは、どんな環境を作るか、どんな食事にするか 日々考え、工夫されています。
この日、農家ハンターの宮川代表と一緒に登壇された九州大学の細谷忠嗣准教授のお話によると、
肉食動物は食事をする際
①獲物を探す
②忍びよる
③襲う
④仕留める
⑤皮を剥ぎ
⑥骨をよけ
⑦食べる
このプロセスを経ますが
動物園では ⑦食べる だけ。
栄養だけでなく、行動を満たしてあげることが、屠体給餌の目的です。
農家ハンターからは実際のイノシシさんと人間の関わりが今どうなっているか、
どんなことが起こっていて、どんなことに困り、
農家ハンターはどんな取り組みをしているか、を話しました。
とても熱心にメモをする子どもさんもいましたよ。
稲葉たっちゃんは宮川さんをバズーカレンズで撮影。
愛です。
動物園×農家ハンター
給餌の前に行われたセミナーの中で、宮川代表が
「イノシシのような野生動物を、動物園のヒーローたちに給餌することは衛生面での心配事もあるかと思いますが
なぜこの取り組みをしようと思われたのですか?」
と動物園の副園長さんに尋ねました。
副園長さんの答えは、
「動物たちにとって良いとされることは、挑戦していきたい」。
動物たちを大切に思っていることが伝わります。
ライオンのサニーちゃんとユキヒョウのスピカ
セミナー後には、いよいよ実際の屠体給餌、
スピカとサニーの様子に、子どもも大人も釘付になっていました。
ここでは生きたイノシシさんをそのまま檻に入れるのではありません。
衛生面から、血や内臓等は取り除き、殺菌加工をしてあります。
それでも、いつも食べる「肉」ではなく「動物」が与えられたことで、ライオンもユキヒョウも興奮した様子でした。
イノシシさんとご対面したユキヒョウのスピカは、まずペロペロ舐めました。
そして咥えて移動し、貪るように食べていました。
ライオンのサニーちゃんは、ちょっと違います。
「どうだ!わたしの獲物!」と見せびらかすかのように
イノシシさんを咥えて観客の前をうろうろうろうろ。
これも普段の食事では見られない行動です。
その後、咥えていろんなところに持っていき、時折離れたり舐めたりしましたが
私たちが見ている前では、サニーが食している様子はありませんでした。
中には、食べ方がわからない、食べるものか分からないといった肉食動物もいるそうです。
スピカとサニーの様子を見た農家ハンターの皆さんは、大事な教え子を見守る先生のような感じでした。。。
イノシシの命がスピカやサニーの命が繋がっていくことで活かされたことへの安堵というのか、
私にはまだうまい言葉が見つかりませんが
「生命、無駄になっていないよ」という愛に近いような
そんなことではないかと思います。
特に子どものウリ坊を仕留めるのは、辛い。
誰かがしなきゃいけないことだけど、お肉や革製品には向かず、活用方法が限られているのも事実です。
そんないろんな思いのなかで、スピカとサニーの様子を見ていたのではないでしょうか。
熊本市動植物園は、全国で4番目にこの屠体給餌を取り入れました。
わたしは、自分の町の動物園が積極的にこれを取り入れたこと、
それが農家ハンターの活動と繋がる嬉しさも感じながら動物園を後にしました。
あなたの町の動物園でも、この取り組みが行われているかもしれません。
「イノシシさんを地域の宝にする」
という農家ハンターの思い、
ここでも一つ形になりました。